ユーミン、ドリカム、百恵に明菜、越路吹雪...桑田佳祐『ひとり紅白歌合戦』を「昭和100年」の年末に推す【吉岡久美子/JAXURY】
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使える、愛でる日本語、日本の「もの」語り ユーミン、ドリカム、百恵に明菜、越路吹雪...桑田佳祐『ひとり紅白歌合戦』を「昭和100年」の年末に推す【吉岡久美子/JAXURY】 2025.12.18吉岡 久美子
51 「歌だけが、詠み人知らずとして残っていくことが私の理想」というユーミンが、分厚い全歌詞集を出版した。日本の「うた」は、やはり歌詞にある。そして今、改めて、日本の歌謡史に残る、素晴らしい「言葉」と「音楽」を堪能できる「うた」のエンターテイメントを凝縮した、桑田佳祐さんの『ひとり紅白歌合戦』を推したい。オフィシャルサイトもまだ残っている。シリーズ完結編の3回目は「桑田佳祐が歌う昭和~平成の壮大なる日本大衆音楽史、ここに完結! !」と謳われている。ドリカム『LOVE LOVE LOVE』vs.スピッツ『ロビンソン』、倖田來未『キューティーハニー』vs.郷ひろみ『GOLD FINGER‘99』、クレイジー・キャッツvs.ザ・ピーナッツのメドレー、越路吹雪に坂本九……。あの桑田佳祐さんが、歌う、踊る、驚かせる。笑わせ、泣かせ、もちろん聴かせ、また笑わせてホロリとさせる、あっという間の61曲のライブが、第一回目。本格かつオモシロゴーカなダンサー、バンドの面々も素晴らしい。知らない歌も聴かせるものばかり。
ユーミン『ひこうき雲』、中島みゆき『時代』など、今も日本を代表する錚々たるミュージシャンの、原点となるような歌が選ばれている。そして、なんといっても歌が本当にうまい!
昭和八十三年度! と書いてあるから、早17年前。もはや、私の年末クラシック盤。今年は昭和なら100年。リーマンショックの年、2008年の12月に横浜で行われたライブで、ひとり61曲(!)を完走ならぬ完唱した桑田さん。その後、5年ごとに3回行っている、原点の第一回がこれ。四半世紀続けてきたAAA(Act Against AIDS)活動の一環なのもすごい。中学3年の夏がはじまったころ、ラジオからいきなり「ラ~ララ~ラララ、ラ~ララ~」と流れてきた『勝手にシンドバッド』。何が起こったかわからなかった。ただ、今までにない、何だかすごいことが起こっている、とわかった。
まだ14歳だった私が強烈に引き込まれた、日本生まれの、私の世代のミュージシャン、それがサザンオールスターズ。
サザンには、当時、まだあった「大衆」が無意識に心惹かれたものがすべて――ロックやボサノバほかラテンなど世界のポップミュージック、日本の歌謡曲のDNA、小学校の頃の定番「8時だョ! 全員集合」での「お色気」や「お笑い」、歌舞伎の見得、落語のオチ……すべてが入っていた。
中学に入った年、クイーンの『炎のロックンロール』(クイーンのデビューシングルの邦題)で、少女まんがとロックが一体となったような世界に魅せられた。これも、私の世代ならではのもの。ビートルズは、ずっと前の世代で生まれたもので、素晴らしいけれど、すでに古典というか、「リッパな音楽」と認定マークがついているような、優等生の音楽でもあった。
大人に眉をひそめられ、まだまだ粗削りな、私の世代の音楽。それがクイーンであり、さらに大きな影響力があった、日本の土地に根差した、サザンオールスターズだった。
サザンは、日本文化らしいミックス感を感じる。ロックからレゲエ、ラテンミュージックなど洋楽という文化が日本にわたり、昭和歌謡と混然一体となった独特のポップス。海外のさまざまな文化を取り入れて、もともとあった文化と融合させ、調和させている。
そして、あの情緒ある日本語。「人も波も消えて」など、自然と不在を切なく訴える、古来からの「うた」が脈々と生きている。『希望の轍』など、日本語ならではの言葉も多い。
理屈っぽくなく、気分次第で歌っているように見えて、韻を踏んだり、日本の四季を感じさせる「粋」や「雅」がちりばめられている。
サザンの登場は1978年。歌謡曲のひとつの終焉を象徴する、山口百恵さんが引退する前の年。
桑田さんは、TVの歌番組『ザ・ベストテン』に突然やってきた、やんちゃな学生バンドのリーダーだっただけではなかった。ほどなくして『恋するマンスリーデイ』では、つい口ずさみたくなる、優しいレゲエ調の曲をつくっている。女性の生理をさりげなく、ポップに、そして優しさと労わりをもって歌ったバンドが、かつて日本のみならず世界にあっただろうか?
優しさと、笑いと、サービス精神。そして歌手や作詞作曲家、歌謡曲へのリスペクト。それらが混然一体となった、この『ひとり紅白歌合戦』は、見る人聴く人の、本来の何か奥深くにある熱いものを呼び起こしてくれると思う。
※この連載は、月曜日と木曜日に更新しています。
<新刊紹介> 『FRaU MOOK JAXURY (講談社 MOOK) 』 5月29日発売 ¥1320 Amazonはコチラ>> 楽天ブックスはコチラ>> 吉岡久美子が編集長を務める、日本が世界に誇るラグジュアリーを全角度網羅した年に一度のFRaU JAXURY(ジャクシュアリー)特集号。今年は「日常、毎日使えるラグジュアリーを、日本から。」特集。 ①JAXURYアワード選出・受賞の日本全国の憧れおすすめ宿&ホテルが約30軒 ②日常の、小さなラグジュアリー」を器、道具、インテリアほかで網羅。 ③世界的建築家・坂茂さんなど、11名のJAXURYインタビュー。…etc. 見るだけ、読むだけで、必ず行きたくなる場所、体験したいものが見つかります。前回記事「ルナワークス「和暦日々是好日」、高橋書店「バーティカル手帳」。和暦で感じる、西暦で考える、B6タイムトリップ【吉岡久美子/JAXURY】」>>
編集者・プロデューサー。講談社に入社後、ファッションから文芸まで、女性誌を中心に幅広く活動。多様な企画を編集・プロデュースした後、「海外とは違う美意識や文化が背景になっている、日本のラグジュアリーがあるのでは?」との想いを共にする方々と「日本からラグジュアリーを再定義」する活動JAXURY(ジャクシュアリー)※(=Japan‘sAuthentic Luxuryの略称)エグゼクティブプロデューサー。オールジャンルによる「JAXURYアワード」を年一回FRaU JAXURY号で発表。文化庁の協力による英語版上製本も世界58カ国に展開。 ※JAXURY(ジャクシュアリー)=慶應義塾大学大学院システムデザイン研究科のアカデミックな研究のもと、各界の第一人者によるJAXURY委員会によって運営され、FRaU ほか、さまざまなメディアで発信される産学メディアプロジェクト。 https://jaxury.media/ja https://jaxury.media(英語) gendai.media/list/special/jaxury
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