高カリウム血症の基礎知識
こうかりうむけっしょう 高カリウム血症 血液中のカリウム濃度が何らかの原因により上昇した状態 16人の医師がチェック 164回の改訂 最終更新: 2025.07.11 執筆・監修 医療事典 MEDLEY 編集チーム 医師・薬剤師カリウムは体内に含まれる電解質(ミネラル)であり、心臓をはじめとした全身の筋肉が働く際に重要な役割を果たしています。正常では血液中のカリウム濃度は4.0mEq/L前後に維持されています。血液中のカリウム濃度が5.0mEq/Lを上回るくらいから高カリウム血症と呼ぶことが多いです。自覚症状としては「力の入りにくさ」などがあります。高カリウム血症において最も注意すべきことは心臓の不整脈であり、不整脈が原因で亡くなることもあるため、高カリウム血症は自覚症状がなくても治療が必要です。高カリウム血症の診断は採血検査で行いますが、高カリウム血症になった原因を調べるために尿検査や画像検査も行われることがあります。高カリウム血症の治療としては、軽度の高カリウム血症ではカリウムの多い食事を制限したり、カリウムの排泄を促進する飲み薬を使用します。重度の高カリウム血症では心臓の重大な不整脈を起こす危険性があるため、入院のうえ注射・点滴治療や、場合によって緊急血液透析を行います。高カリウム血症が心配な方や治療したい方は内科を受診してください。腎臓内科や内分泌内科が特に専門としていることが多い病気です。
- 血中の電解質(ミネラル)の一種であるカリウムの濃度が高くなった状態
- 重度の高カリウム血症は、突然の心停止につながりうるため危険
- カリウムの主な役割
- 細胞内の浸透圧の調整
- 筋肉の収縮
- 神経の働きを保つ
- 食事から多くのカリウムを摂取しても、通常は腎臓の働きによって尿にカリウムが排泄される
- 腎臓の働きが低下するとカリウムが溜まり、高カリウム血症になりやすくなる
- 腎臓が正常ならば、食事の偏りが原因で高カリウム血症になることはない
- 血中のカリウム濃度が高くなってしまう原因
- カリウムの排出機能の低下
- 腎不全
- 薬剤
- 副腎の病気による、アルドステロンの分泌低下
- アジソン病など
- 偽性低アルドステロン症
- 尿細管アシドーシス
- 糖尿病
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- シェーグレン症候群
- 移植腎
- 間質性腎障害
- 細胞内から血液中へのカリウムの移動
- 高浸透圧血症
- 高血糖
- アシドーシス
- 飢餓(インスリン不足)
- 溶血、内出血、横紋筋融解症、クラッシュ症候群などの細胞破壊
- カリウムを大量に含む薬剤:カリウム製剤(商品名アスパラ®、アスパラカリウム®)など
- 高カロリー輸液、経管栄養
- 赤血球輸血
- カリウムの排出機能の低下
- 高カリウム血症の原因になる薬剤
- NSAIDs:ロキソプロフェン(ロキソニン®)、ジクロフェナク(ボルタレン®)など
- ACE阻害薬:テモカプリル(エースコール®)、イミダプリル(タナトリル®)、エナラプリル(レニベース®)など
- ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬):ロサルタン(ニューロタン®)、カンデサルタン(ブロプレス®)、テルミサルタン(ミカルディス®)、オルメサルタン(オルメテック®)、イルベサルタン(アバプロ®、イルベタン®)、アジルサルタン(アジルバ®)など
- 免疫抑制薬:シクロスポリン(ネオーラル®、サンディミュン®)、タクロリムス(プログラフ®)など
- 抗菌薬:ST合剤(バクタ®)、ペンタミジン(ベナンバックス®)など
- タンパク質分解酵素阻害薬:ナファモスタット(フサン®)
- 抗アルドステロン薬:スピロノラクトン(アルダクトン®)、エプレレノン(セララ®)など
- カリウム保持性利尿薬:トリアムテレン(トリテレン®)、アミロライドなど
- ヘパリン
- ペニシリンG
- β遮断薬、ジギタリス、アミノ酸製剤、サクシニルコリン
- 慢性腎臓病や糖尿病腎症の治療に使われる降圧薬のレニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬、ARB)は高カリウム血症の原因になりうる
- 採血時の検体不良(溶血)のため検査上の誤差で高カリウム血症のように見える場合がある
- 主な症状
- 筋力の低下(脱力感)
- 不整脈
- 吐き気、嘔吐
- しびれ、感覚障害 など
- 血液検査
- 腎機能や血液中のカリウム濃度を調べる
- 心電図
- カリウムによる心臓への影響を確認する
- 心電図にはカリウム濃度に応じて特徴ある波形が現れる
- 6.0mEq/Lを超えるくらいから心電図の変化が見られはじめ、7.0mEq/Lを超えるくらいから危険な不整脈がみられることがある
- 高カリウム血症による不整脈の種類
- 心室細動
- 心室細動は心停止に至り、突然死の原因となりやすい
- 洞停止
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- 2枝ブロック
- 心室細動
高カリウム血症の治療法
- 治療の目的
- 血液中のカリウム濃度を低下させる
- 不整脈の出現を予防する
- 薬物療法
- 補液、輸液
- 陽イオン交換樹脂製剤:カリウムの体内への吸収を抑える
- カリメート®、ケイキサレート®、ビルタサ®、ロケルマ®など
- 利尿薬:カリウムの尿中への排泄を促進する
- 重炭酸ナトリウム(重曹):血液中のカリウムを血液の外へ移動させて、一時的にカリウムの濃度を低下させる
- ブドウ糖とインスリンの併用(グルコース・インスリン療法):血液中のカリウムを細胞内へ移動させて、一時的にカリウムの濃度を低下させる
- β2刺激薬:カリウムの細胞内への移動を促す
- カルシウム製剤:カリウムの心臓に対する影響を出にくくする
- 鉱質コルチコイド製剤(フロリネフ®):カリウムの尿中への排泄を促進する
- 血液透析(緊急性の高い場合)
- 薬物療法のみで早期改善が見込めない場合や、心臓への影響のため直ちに薬物療法以外の治療が必要な場合には、血液透析を行う
- 血管に太めの管(カテーテル)を入れて、血液中のカリウムを直接洗い流す
- 食事療法
- 急な対応が不要な場合には、カリウムを多く含む食品を制限する
- 海藻類(昆布、ひじき、わかめ、海苔)、キノコ(マイタケ、シイタケ、きくらげ)、豆類(大豆、インゲンマメ、小豆)、バナナなどの果物、生野菜、牛乳、杏子、鮭など
- カリウム摂取量は1日あたり1,500mg以下を目安とする
- 急な対応が不要な場合には、カリウムを多く含む食品を制限する
- 主に腸管内でカリウムイオンを吸着し、そのまま体外へ排泄させることで血液中のカリウムイオン濃度(カリウム値)を下げる薬
- 血液中のカリウム値が高い状態が続くと高カリウム血症が引き起こされる
- 慢性腎臓病などの腎機能が低下する病態では血液中のカリウム値が高くなりやすくなる
- 本剤は主に腸管内で薬剤成分がもつ陽イオンをカリウムイオンと交換し、吸着したカリウムイオンごと薬剤成分を体外へ排泄させることで結果的に血液中のカリウム値を低下させる
- 体内にカルシウムを補充し、骨粗しょう症、高リン血症、消化器症状などを改善する薬
- カルシウムは体内で骨を強くする作用、リンを体外へ排泄する作用、胃酸に対する制酸作用などをあらわす
- 本剤はカルシウムを含有する製剤で、製剤毎の特徴などによって色々な疾患・症状に使用する
- 本剤は主に有機酸系カルシウム製剤と無機系カルシウム製剤に分かれる
- インスリンを体内に投与することで、血糖値を下げ糖尿病による合併症を防ぐ薬
- 糖尿病は血糖値が高い状態で、この状態が続くと様々な合併症を引き起こす
- インスリンは血糖を下げるホルモン
- インスリン製剤はインスリンアナログ製剤とヒトインスリン製剤に分かれる
- インスリン製剤は作用発現時間や作用持続時間などにより以下の種類に分かれる
- 超速効型:作用発現時間が10〜20分、作用持続時間は3〜5時間で「食直前に投与」・フィアスプ注やルムジェブ注は通常、食事開始時(食事開始前の2分以内)に投与
- 速効型:作用発現時間は30分〜1時間、作用持続時間は5〜8時間で「食前30分に投与」
- 持効型:作用持続時間は約24時間又はそれ以上で、継続使用時に明らかなピークが見られないため、中間型に比べてよりスムーズに基礎分泌を補いやすいメリットが考えられる・アウィクリ(インスリン イコデク)は、ほかの持効型よりも作用持続時間が長く「週1回投与」が可能
- 中間型:作用発現時間は30分〜3時間、作用持続時間は18〜24時間(同じ中間型でも製剤によっては作用持続時間に開きがある場合もある)
- 混合型:超速効型又は速効型に、一定量の添加物を加えたり中間型を組み合わせた製剤(超速効型又は速効型の配合割合により規格が複数存在することがある)
- 一部のインスリン製剤は高カリウム血症の治療に使われる場合もある
高カリウム血症では、脱力感や動悸、吐き気といった症状が出現することがあります。通常高カリウム血症になる原因として腎不全や横紋筋融解症など何らかの別の病気がありますので、高カリウム血症だけが突然起きるという心配はありません。
高カリウム血症の診断そのものは、血液検査が行える医療機関であればどこでも可能です。しかし、実際に高カリウム血症と診断されたときの治療まで考えると、総合病院の救急科、もしくは内科の受診が望ましいでしょう。また、高カリウム血症によって不整脈が出ることがあるため、心電図の検査も合わせて行われることがあります。
高カリウム血症は、血液検査の結果で診断します。カリウムの血中濃度は通常3.5-5.0mEq/L程度ですが、この範囲を越えて更に6-7mEq/L以上になると症状や心電図異常が出はじめます。自己診断は難しい病気ですので、何らかの理由で高カリウム血症が心配な方は、まず病院を受診して血液検査を受けることをお勧めします。
高カリウム血症に関連する診療科の病院・クリニックを探す 高カリウム血症でお困りの方高カリウム血症の治療には、様々な点滴や吸入薬があります。高カリウム血症が悪化すると突然死の原因になりえますので、重症の場合には緊急の治療が必要です。
このような治療を行うのは、救急科、または内科全般が専門の診療科です。どちらかと言えば重症の場合は救急科、そうでない場合は内科が担当することになります。突然の高カリウム血症ではなく、週単位や月単位で軽度の高カリウム血症が持続しているような場合には、内科で対応することになるでしょう。高カリウム血症が起きている原因が何かしらあるはずですから、高カリウム血症の治療というよりも、その原因の治療が重要となります。
高カリウム血症の原因として多いのは腎臓の異常で、その場合は腎臓専門医が診療を行うことが多いです。重症であれば、血液透析といって献血のように体外に一度血液を取り出して、そこから余分なカリウムだけをフィルターで除去し、残りの血液を体内に戻すといった処置を行います。このような特別な治療が必要になる可能性を考えると、数日間で生じたような急激な高カリウム血症の場合にはクリニックではなく地域の中核病院での治療が必要です。
高カリウム血症に関連する診療科の病院・クリニックを探す 高カリウム血症が含まれる病気 電解質異常(総論) 高カリウム血症のタグ 診療科 一般内科 救急科 代謝・内分泌内科 からだ 全身・その他 胸(肺・心臓・その他) お腹(胃腸・肝臓・子宮・その他) 筋肉 検査 尿素窒素 クレアチニン 園田 唯 医師 斎木 寛 医師 佐藤 達也 医師 福田 健介 医師 杉野 美緒 医師 中澤 巧 薬剤師 医療事典MEDLEY 編集チーム一覧はこちら本サービスはこちらの編集プロセスに従って制作されています。できる限り正確な情報となるよう努めていますが、内容の正確性を完全に保証するものではありません。情報に誤りがある場合は、こちらからご連絡をお願いいたします。
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