源氏物語『若紫 垣間見』品詞分解/現代語訳/解説①
源氏物語『若紫 垣間見』品詞分解/現代語訳/解説①- 2023.11.23
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- 1. はじめに
- 2. 日もいと長きに、つれづれなれば、夕暮れのいたう霞みたるにまぎれて
- 3. かの小柴垣のもとに立ち出でたまふ。
- 4. 人々は帰したまひて、惟光の朝臣とのぞきたまへば、
- 5. ただこの西面にしも、持仏すゑたてまつりて行ふ尼なりけり。
- 6. 簾少し上げて、花奉るめり。中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、
- 7. いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。
- 8. 四十余ばかりにて、いと白うあてに、やせたれど、つらつきふくらかに、
- 9. まみのほど、髪のうつくしげにそがれたる末も、「なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな。」とあはれに見たまふ。
はじめに
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今回は源氏物語の『若紫 垣間見』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
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日もいと長きに、つれづれなれば、夕暮れのいたう霞みたるにまぎれて
日 名詞 も係助詞いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。長き形容詞ク活用の形容詞「長し」の連体形に格助詞つれづれなれ形容動詞ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」の已然形。やることがなく手持無沙汰であることを示す。ば接続助詞★重要文法接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)⇒仮定(もし~ならば)②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)⇒(ⅰ)原因・理由(~なので)(ⅱ)偶然(~したところ)(ⅲ)必然(~するといつも)ここでは原因・理由で解釈しておく。「手持無沙汰(暇)だから○○する」ということだが、その○○に入るのはここでは「垣間見」である。これが光源氏だ。夕暮れ名詞の格助詞同格用法いたう形容詞ク活用の形容詞「いたし」の連用形のウ音便。痛いと感じるほどの激しさを表す。打消の言葉を伴って「それほど~ない」の意味で使われることが多いが、ここでは「とても」と解釈して差し支えない。霞み動詞マ行四段活用動詞「霞む」の連用形たる助動詞完了の助動詞「たり」の終止形。助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)に格助詞まぎれ動詞ラ行下二段活用動詞「まぎる」の連用形て接続助詞 日もたいそう長いときに、(光源氏は)手持無沙汰なので、夕暮れでとても霞んでいるのに紛れて、かの小柴垣のもとに立ち出でたまふ。
か 代名詞 あの。例の。ここだけ読んでも何が「あの(例の)」なのか分からないが、ここより前の場面で「小柴垣の建物」が登場している。の格助詞 小柴垣名詞細い木の枝を編んで作った背の低い垣根のことの格助詞もと名詞に格助詞立ち出で動詞タ行四段活用動詞「立つ」の連用形+ダ行下二段活用動詞「出づ」の連用形。複合動詞として一語と見てもよい。たまふ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形。「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。ここでは作者から光源氏に対する敬意を表す。 あの(例の)小柴垣のところへお出かけなさる。人々は帰したまひて、惟光の朝臣とのぞきたまへば、
人々 名詞 は係助詞帰し動詞サ行四段活用動詞「帰す」の連用形。光源氏はここで「惟光」以外の従者を帰すが、それは人が多いと気付かれてしまうからか、はたまた二人でしっぽりと垣間見をしたかったからなのか。たまひ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。尊敬の補助動詞。て接続助詞惟光名詞光源氏の乳母の子ども(=乳母子)で、光源氏が深い信頼を寄せる従者。共に数々の忍び歩きを行い、身分を超えた「戦友」のような存在である。の格助詞朝臣名詞「あそん」と読む。五位以上の貴族の名につける敬称のこと。と格助詞のぞき動詞カ行四段活用動詞「のぞく」の連用形。いわゆる垣間見である。現代に生きる我々が行うと犯罪になってしまうのでやってはいけない。たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。尊敬の補助動詞。ここでは作者から光源氏への敬意を表す。ば接続助詞前述の「ば」を参照されたい。ここでは偶然条件で取ると自然か。 人々(従者)はお帰しになって、惟光の朝臣と(共に家の中を)おのぞきになると、ただこの西面にしも、持仏すゑたてまつりて行ふ尼なりけり。
ただ 副詞 「ちょうど」の意。こ代名詞の格助詞西面名詞西向きの部屋のこと。極楽浄土があるとされる西方に向かって祈っている。に格助詞しも副助詞副助詞「し」+係助詞「も」がついた語。意味としては「強調」であるため、判別した後は無視してもよい。持仏名詞守り本尊として常に身近に置いて信仰する仏像のことすゑ動詞ワ行下二段活用動詞「すう」の連用形。ワ行下二段活用動詞は「すう(据う)」「植う」「飢う」の三語だけである。たてまつり動詞★重要単語ラ行四段活用動詞「奉る」の連用形。「奉る」は尊敬語・謙譲語両方の用法があるため、苦手とする受験生が多い。以下に整理しておくのでしっかり確認しておこう。〇尊敬語【本動詞】・「食ふ」「飲む」の尊敬語「召し上がる」・「乗る」の尊敬語「お乗りになる」・「着る」の尊敬語「お召しになる」〇謙譲語(謙譲語の方が目にする機会は多い!)【本動詞】・「与ふ」の謙譲語「差し上げる」【補助動詞】・「~し申し上げる」★「補助動詞は用言や助動詞などの活用する語に付く場合である」ことを押さえておきたい。ここでは作者から持仏への敬意。て接続助詞行ふ動詞ハ行四段活用動詞「行ふ」の連体形。仏道修行をする・勤行する、の意味で用いられることが多い。古文の世界では仏道修行が最も大切な「行い」だと考えられていたという考え方もある。尼名詞出家して仏門に入った女性のことなり助動詞断定の助動詞「なり」の連用形。助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。けり助動詞詠嘆の助動詞「けり」の終止形。過去と解釈するのも一つだが、垣間見をしている光源氏が「尼だったのか!」と「はっと気づく」シーンである。食パンを咥えた美少女が「いっけなーい!遅刻遅刻!」と通学路を爆走したり、態度の大きなイケメンが「ふっ、おもしれー女」と言ったりするのと同じくらい、「垣間見」はラブストーリーにおける「出会いの定番」なのであるが、実際に目にしたのは美少女ではなく、尼だったのである。光源氏の衝撃たるやいかに。 ちょうどこの西向きの部屋に、仏像を置き申し上げて、仏道修行をする尼だったのだ。簾少し上げて、花奉るめり。中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、
簾 名詞 部屋の外と内を隔てたり、日よけにしたり、部屋の中を隔てたりするのに使うもの少し副詞上げ動詞ガ行下二段活用動詞「上ぐ」の連用形て接続助詞花名詞奉る動詞ラ行四段活用動詞「奉る」の終止形。尼から持仏への敬意が示された謙譲語。めり助動詞推定の助動詞「めり」の終止形。助動詞「めり」は視覚に基づいた推定をする際に使われる。聴覚に基づいた推定を表す場合は推定の助動詞「なり」を使う。推定の「めり」「なり」は共に終止形接続。中名詞 の格助詞 柱名詞「中の柱」で部屋の中にある、壁などに接していない柱のことを指すに格助詞寄りゐ動詞ラ行四段活用動詞「寄る」の連用形+ワ行上一段活用動詞「ゐる」の連用形。複合動詞として一語と見てもよい。上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。て接続助詞脇息名詞肘をかけて休憩するための道具のこと。読みは頻出で「けふそく(きょうそく)」。の格助詞上名詞に格助詞経名詞釈迦の教えや言行を記した書物のことを格助詞置き動詞カ行四段活用動詞「置く」の連用形て接続助詞 簾を少し上げて、花を(仏像に)差し上げるようだ。部屋の中の柱に寄りかかって座って、脇息の上にお経を置いて、いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。
いと 副詞 なやましげに形容動詞ナリ活用の形容動詞「なやましげなり」の連用形。気分が悪く苦しそうだ、の意味。マ行四段活用動詞「なやむ」から思考を巡らせたい。読みゐ動詞マ行四段活用動詞「読む」の連用形+ワ行上一段活用動詞「ゐる」の連用形。複合動詞として一語と見てもよい。たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形尼君名詞ただ人名詞ここでは、普通の身分の人、の意味と格助詞見え動詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の未然形ず助動詞打消の助動詞「ず」の終止形 たいそう気分が悪く苦しそうにお経を読み座っている尼君は、普通の身分の人には見えない。四十余ばかりにて、いと白うあてに、やせたれど、つらつきふくらかに、
四十余 名詞 現代に比べて寿命が短かった平安時代では、四十歳からが初老とされていた。ばかり副助詞程度の副助詞。限定の用法もあるので合わせて覚えておこう。に助動詞断定の助動詞「なり」の連用形て接続助詞いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。 白う形容詞ク活用の形容詞「白し」の連用形のウ音便あてに形容動詞 ナリ活用の形容動詞「あてなり」の連用形。漢字をあてると「貴なり」であるとおり、身分が高い、がもとの意味。身分の高い人は上品かつ優雅なふるまいをするため、「あてなり」の意味としては「高貴だ」「上品だ・優雅だ」を思い浮かべるとよい。やせ動詞サ行下二段活用動詞「やす」の連用形たれ助動詞存続の助動詞「たり」の已然形ど接続助詞逆接の接続助詞。已然形接続ということも押さえておきたい。つらつき名詞ほおのあたりの様子、横顔の様子のこと。「つら」は漢字を当てると「面」である。ふくらかに形容動詞ナリ活用の形容動詞「ふくらかなり」の連用形。ふっくらした。当時はふっくらとした「瓜実顔(うりざねがお)」が美人の特徴の一つとされた。 (尼君は)四十歳過ぎぐらいであり、たいそう白く上品で痩せているが、ほおのあたりはふっくらとして、まみのほど、髪のうつくしげにそがれたる末も、「なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな。」とあはれに見たまふ。
まみ 名詞 目つき、または、目元のことの格助詞ほど名詞ここでは目元「周辺」の意味と解釈しておくと自然か。髪名詞の格助詞主格用法うつくしげに形容動詞ナリ活用の形容動詞「うつくしげなり」の連用形。古語の「うつくし」を目にして、最初に出てくる意味は「かわいい」であってほしいが、ここでは髪が「美しい」と解釈したい。そが動詞ガ行四段活用動詞「そぐ」の未然形 。当時の出家した女性は「尼削ぎ(あまそぎ)」と呼ばれる、肩や背中のあたりで揃えられた髪型をしていた。れ助動詞受身の助動詞「る」の連用形。助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形末名詞も係助詞なかなか副詞中途半端に、かえって、という意味を持つ副詞。もともとは「中途半端に」の意味を持つが、その意味が転じて「かえって」の意味が生じた。今回は後者の訳をあてる。長き形容詞ク活用の形容詞「長し」の連体形より格助詞も係助詞こよなう形容詞ク活用の形容詞「こよなし」の連用形のウ音便。対象のものが他のものと比べて「格段に」プラスなのかマイナスなのかを表す語。「こよなし」のように、なにかとの比較を表す語が出てきた際は、「なにが」「なにと比べて」「どのような点において」「プラスなのかマイナスなのか」を押さえるとよい。今めかしき形容詞シク活用の形容詞「今めかし」の連体形。カ行四段活用動詞「今めく」が形容詞化した語。「現代風だ」の意味以外にも、「軽薄だ・わざとらしい」の意味もあるため注意。もの名詞かな終助詞詠嘆を表す終助詞と格助詞あはれに形容動詞ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形。「趣深い」「かわいそう」「すばらしい」など様々な訳語をあてることができるが、 「あはれ」とは基本的・包括的な美的理念であり、 一面性のみに光を当てるべきではないことを理解しておきたい。近年「エモい」というある意味「便利」な言葉が生まれたが、平安時代の精神と通ずるところがあるように思える。「エモい」「尊い」などを先人が逆輸入すれば「あはれなり」と訳するのかもしれない。見動詞マ行上一段活用動詞「見る」の連用形たまふ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形。尊敬の補助動詞。ここでは作者から光源氏への敬意を表す。 髪がきれいに切り落とされている先端も、「かえって長い髪よりも格段に現代風であることだなあ。」と(光源氏は)しみじみとご覧になる。今回はここまで🐸
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