トイレの花子さん
クラスで話題になっていた「トイレの花子さん」のうわさ… しかし、その正体は意外な人でした。
YouTubeでみる
くわしくみる
第2回 少し怖い妖怪・おばけのお話コンテストの最優秀作品
- 文:袴田奈月
- 声:とまこ。(koebu)
- 絵:クロッキー
- アニメ:インターン生
本文
ねえみんな、こんな話、しってる? 「学校のトイレに、花子さんがいる。」 学校の授業が終わって、時計の針が、4時44分をさしたとき、入口から3つ目のトイレのドアを、とんとんと3回、ノックする。そうして「花子さん、こんにちわ」っていうとね、「はあい」ってこえがして 、花子さんの白い手がにゅうとのびてくる。そうして、くらいべんきのおくのセカイに、引きずりこまれてしまうって、ウワサ。 ユキちゃんのクラスでは、今、その話でもちきりなんだ。やんちゃなマサオくんがね、ウワサ通りに、「花子さんをみた」っていうんだから。 いいや、実際には、『はあい』という声を聞いた、だけなんだけど。 「ばっかだなあ、なんで、すっ飛んでにげてきちゃったんだよ。こえを聞いただけじゃ、わかんないじゃんか。やっぱり、カオを見なきゃ」れいせいなシンジくんがいうと、マサオくんは「とんでもない!」と言って、「だって、手が伸びてきたら、つかまっちゃうじゃんか!そんなの、にげなきゃ、コロサレるにきまってんだろ」とひっしだ。じっさい、マサオくんはクラスで一番かけっこがはやい。「おれだからこそ、にげきれだんだ」と、むねをはる。 「けどさ、花子さんて、一体だれ?」ユキちゃんがそぼくなギモンをなげると、どくしょ家のミカちゃんが、「30年前に、この学校のせいとだった女の子よ。トイレでジコにあって、しんだの。本にかいてあったわ」そんなことも、しらないのと鼻をならす。 「とにかく、一度やってみようぜ。今日のほうかご、みんなでさ」そう決めたみんなは、 おそるおそる、でもなんだかすこしわくわくしていた。 やくそくどおりその日のほうかご、4時44分、4人は3番目の女子トイレのとびらの前にれつを作っている。花子さんに会うために。 トントントン――マサオくんが3回、ノックする。かれは、そうしながら、もう走り出すかまえをしている。だけど、それをわらうよゆうなんか、ほかの3人にもない。 そうして、おたがいに手をつなぎあった4人はこえを合わせて、いった。 「花子さん。こんにちわ」 「はあい」 返事が返ってくるのを聞くよりも にげだすほうが早かった気がする。4人は手をつなぎ合ったまま、いっせいにかけだしたけれど、そのうちに、ミカちゃんの足がもたれてころんでしまった。そうして、なだれのように、ほかの三人もつられてバランスをくずしてたおれていく―――その後ろから、花子さんの白い手がにゅうと伸びて―――。 「ああ、あぶないわ。かわいそうに。痛かったでしょう」 花子さんはやさしい声で言うと、その白いうでで4人をやさしくだきおこしてくれた。 その周りには、4人がにげて走ってけちらした、デッキブラシや水に入ったバケツがちらばっている。花子さんの大切な仕事道具だ。 「あなたが、花子さん?」ユキちゃんがおそるおそるたずねる。 「そうよ 花山花子って言うの。 この学校の、おそうじのおばさんをしています。――いつもこの時間は、トイレそうじをしていることが多いわね」 ユキちゃんたちがそうぞうしていたより大人な、「花子さん」は、いきいきとして、教えてくれた。 「なんだあ」 4人とも、ほっと一息、少しだけざんねんなキモチで、へなへなと、花子さんがそうじしたてのピカピカのゆかにすわりこむ。 「じゃあ、トイレの花子さんのうわさはうそだったのね。30年前、ジコにあってしんだとか」本を何よりもしんじているミカちゃんががっかりしていると 「あらそれはわからないわ」 ちょうど自分がみがいているぴかぴかのトイレのゆかみたいに、 花子さんの目がいたずらっぽく光った。 「30年前は私もあなたたちと同じ小学生だったわ。 それに、そのころのトイレは「ぼっとん」だったから、夜暗いときになんかいくと、足をすべらしてトイレの穴に落ちるんじゃないかしらって、とても怖かったものよ」 「じゃあ、うそじゃないかもしれない!」ミカちゃんはうれしそうだ。 「でも、『トイレの花子さん』はこわいけど、『花子おばさん』は、こわくないね!!」 シンジくんが言うと、花子おばさんは、また目をキラキラさせて、笑った。「おばさん、はよけいね」と言って。 それからというものユキちゃんやクラスのみんなは、学校の授業が終わっておうちに帰る前、必ずトイレに立ちよる。花子さんに会うために。キラキラ輝く、あのえがおと元気なこえにあうために。 「花子さん、こんにちわ!」 「はあい」 「いつもきれいにしてくれて、ありがとう!」 「みんな、いつもきれいにつかってくれて、ありがとう」 そう。「花子さん」のことが大好きになった子供たちもセンセイも、前よりもトイレや学校にあるいろんなものたちを、大切に使うようになった。だってそのほうが、『花子さん』もみんなも、きっとすてきな気持ちになれるだろうから。
- ツイート
おはなし一覧