「クリックバルブにすると空気が抜けにくくなるのか」実験
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「クリックバルブにすると空気が抜けにくくなるのか」実験

「クリックバルブにすると空気が抜けにくくなるのか」実験 2026 2/09 実験 Clik 2026年2月9日2026年2月11日 6777view

この記事は約 9分で読めます。

「バルブコアを仏式→クリックバルブに変更したら空気圧低下が緩やかになるのか」を実験して確かめました。

目次

実験の動機

まずは実験の動機から。

「空気が抜けにくくなった」

昨年、テストのためにクリックバルブを使い始めましたが、思いのほかメリットが多くて、我が家の自転車の大半は仏式バルブからクリックバルブへと換装されました。

新しい周辺グッズも色々と出てくるので、日々クリックバルブに関する情報を検索しているのですが……最近、ちょっと妙な内容をよく見るようになったのです。

「クリックバルブに替えたら、空気圧低下が遅くなった」

「クリックバルブにしてから、空気入れの頻度が半分になった」

一人や二人ではなく、結構な人数(それもお互いに関わりのない人たち)が同じことを言っているのです。個人的には全く体感していなかった内容なので驚きました。

実際、「空気圧低下が遅くなった」と感じている人はどれくらいいるのか、アンケートを取ってみました。

【アンケート】クリックバルブに移行した方に質問です。仏式バルブに比べて、自然な空気圧低下の具合はどうなったと感じますか?リプライで、選択肢とタイヤシステム(クリンチャーかチューブレスか)も教えて頂けると助かります。

— ばる (@barubaru24) February 6, 2026

回答数は234人ですが、130人くらいは「回答閲覧用(非クリックバルブユーザー)」です。約100人のクリックバルブユーザーから回答があり、うち15人ほどが「空気圧低下が遅くなった」と感じているということになります。

空気圧の自然低下の原理

スポーツ自転車に乗る人であれば知っていることですが、自転車のタイヤの空気圧は、時間とともに少しずつ落ちていきます。ブチルチューブやTPUチューブなら、1日に0.2barくらい。ラテックスチューブだと1日に1.0bar以上も空気圧が低下します。

これは別に製造上の問題があるわけではなく、「気体の透過」によって起こります。

あわせて読みたい ゴムの気体透過性、ガス透過性 – パッキンランド ゴムの気体透過性、ガス透過性、パッキン、テフロン、Oリング、オイルシール、ゴム、フッ素樹脂の情報サイトです。

チューブに使われるブチルゴムやTPU等の素材は分子が絡み合った構造をしており、高圧な内部から低圧な外部へ気体分子が素材内に「溶解・拡散」して移動します。「素材中を気体分子がどれだけ通りやすいのか」という度合いは「透過係数」で表します。ラテックスは透過係数が高いので空気圧が落ちやすく、ブチルゴムやTPUは透過係数が小さいので空気圧が落ちにくいわけですね。

バルブの交換でそんなことが起こるのか?

自転車のチューブにおいて、空気圧低下の主因は「気体透過」であると言われてきました。

で、あればバルブコアを交換した所で空気圧低下の度合いは変わらないはずです。空気が抜けていくのは、チューブの素材であるブチルゴムやTPU部分からなので、バルブ先端のコアを替えても影響はないはず。

しかし、15%の人は「バルブコアを替えただけで空気圧低下が遅くなった」と感じている。これを否定できる材料は私の中にはありませんでした。

こういう時こそ「実験」です。バルブコア以外の条件は固定して、空気圧低下の具合を測定する実験を行いました。

実験

それでは実験をして行きます。

実験内容

実験方法は以下です。

実験方法
  1. バルブコアをクリックバルブに交換する
  2. 電動ポンプで6.0気圧まで充填する
  3. パナレーサーの空気圧計で空気圧確認
  4. 24時間後にもう一度、空気圧確認

バルブコアを仏式に変えて、1-4を同じように行う。

空気を入れてから24時間経過時点での自然な空気圧低下を測定します。ホイール・タイヤ・チューブは全て同じものを使用し、バルブコアだけを交換する対照実験です。

バルブコアは、毎回アルミ製のバルブコアツールを使ってしっかり締め込んで装着しています。

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チューブは、PanaracerのTPUチューブ「Purple Lite」を用いました。バルブコアが交換できる、数少ないTPUチューブです。

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こちらは以前にも仏式バルブ状態で空気圧低下の試験は行っており、24時間で0.2barほどの低下を確認していました。

測定には、愛用しているPanaracerのデジタルエアゲージを用いました。仏式バルブ側の口金でクリックバルブの空気圧も計測可能です(かなり強く押し込む必要はあります)。

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実験結果は以下のようになりました。

スクロールできます バルブコア開始時気圧[bar]24時間後気圧[bar]気圧低下[bar]クリックバルブ 6.075.980.09仏式バルブ①PurpleLite付属品6.045.830.21仏式バルブ②出処不明6.025.800.22

なんと、クリックバルブの気圧低下は、仏式バルブの約半分という結果になりました。100人中15人の方が感じていたのは本当だったということになります。

1社のみが製造しているクリックバルブに対し、仏式バルブは多くの会社が生産しています。そのため、個体差もそれなりにあるのではないかと考え、急遽予定になかった「仏式バルブ②」でも実験を行いましたが、仏式バルブ①と結果は変わりませんでした。

今回の実験結果から言うと、「仏式バルブ→クリックバルブにすると、空気圧低下が遅くなる」ということになりました。ちょっと驚きです。

なぜこうなるのか

正直よく分かりません。

推測としては以下の2点が効いてそうな気がします。

仏式の方が空気圧低下が早い理由
  1. 仏式バルブにはバネが無く、クリックバルブにはバネが入っているから。
  2. シール部分の形状が、仏式バルブは円柱形状、クリックバルブはテーパー形状になっているから。

まずは1つ目の理由。仏式バルブにはバネが内蔵されていません。シール部は、チューブの内圧で押し付けられます。

一方、クリックバルブはピンを押し上げるためのバネが入っており、内圧+バネの与圧でシールを押し付けます。これにより、微妙にシールの押し付けがクリックバルブのほうが強いのではないか、と推測しています。

仏式バルブコア クリックバルブコア

もう一つの理由としては、フタをしているゴムシールの形状の差です。バルブコアを作っている工場によっても違うのですが、仏式バルブコアのシールは円柱状のものが多いです。少しでもズレた角度で入ってしまうと「点でシールする」ことになってしまい、微細な空気漏れが起こっているのではないか……と推測しました。

これに対し、クリックバルブコアのシールはテーパー(徐々に細くなる)形状。これによって、「面でシールする」ことになり、空気漏れが起こりにくいのではないでしょうか。

Panaracerの単品売り仏式バルブコア

Panaracerの単品売りしている仏式バルブコアは、シール形状がテーパーです。今回は実験をしていませんが、もしかしたら他の仏式バルブコアよりも空気漏れが少ない可能性はあります。

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現在は別の新世代バルブの空気漏れ実験を優先しているのでしばらく先になりそうですが、追加実験をして分かったことがあれば追記します。

追記(2026/2/11)

Panaracerの仏式バルブコアでも24時間試験を実施しました。

スクロールできます バルブコア開始時気圧[bar]24時間後気圧[bar]気圧低下[bar]仏式バルブ③Panaracer単体売り6.045.870.17

他の仏式バルブが24時間で0.20barを超えていたのに対し、Panaracerの仏式バルブコアは0.17barに留まりました。仏式バルブコアの中では明確に空気圧低下が少ないと言って良さそうです。このことから、シール形状が空気圧低下と関係があるとも言えそうですね。

ただ、クリックバルブの0.09barと比べるとやはり空気圧低下が大きい。シール形状だけではなく、バネの有無も効いているのではないかと思います。「テーパーのシール形状」+「バネによる押し付け」の合わせ技で、空気圧低下を減らしているのでしょう。

ラテックスチューブではどうなる?

「クリックバルブに替えたら、空気圧低下は半分になるのか! じゃあ、ラテックスチューブなら1日に0.5barの低下で済むんじゃ……」と考えてしまいそうなところですが、そうはならないと思います

恐らく、仏式バルブコアの空気圧低下は「気体透過」ではなく「単にシールの隙間から漏れている」可能性が高いです。そうなると、ラテックスの透過係数の大きさはあまり関係ありません。

実験をしていないのでなんとも言えませんが、恐らく「24時間で落ちる気圧が0.1bar程度減る」に留まるんじゃないかと思います。「1.0bar落ちていたものが、0.9barで済む」という程度なので、あまりメリットとしては感じにくそうです。

実走実験だとどうなる?

今回の実験では、単に「空気を入れて24時間静置」しただけです。恐らく、その間に実走行が挟まると、空気漏れの量は多くなるはず。

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2019年のPBPに私は仏式のブチルチューブで参加しました。スタートから42時間後に到着したBRESTでフロアポンプを借りて空気圧を確認した所、スタートからきっちり1気圧落ちていました。仮に、0.2bar/24時間のペースで空気が抜けるとすれば、42時間後は多くても0.4気圧程度しか落ちていないはず。しかし、0.6気圧も余計に落ちていたのです。

少々この例は落ち過ぎな気もしますが、振動や遠心力によって微細なシールのズレが起きることは有りえますし、走行時のブレーキ熱によって気体透過率が増加します。基本的に、抜ける空気量は「静置<実走」となるはず。

ブルベでは、2日くらいタイヤの空気を継ぎ足さずに走り続けることは良くありますが、そこで落ちる空気圧が1気圧なのか0.5気圧なのかでは、色々と話が変わってきます。転がり抵抗も変わるでしょうし、あまり空気圧が落ちすぎるとリム打ちパンクの危険性も高まります。空気圧は落ちないに越したことはありません。

実走を挟んだ実験も、そのうちやってみようと思っています。

まとめ

「仏式バルブ→クリックバルブにすると空気が抜けにくくなるのか」の実験レポートでした。

今回の実験では「抜けにくくなる」という結果になりました。正直「変わらない」と予想していたので、個人的には驚きです。アンケートで「空気圧の低下が遅くなった」と感じていた15人の方の感性は正しかったことになります。

実験の試行回数が少ないので、結果の確実性については議論の余地はありそうですが、ともかく今回はそういう結果となりました。

一見すると「クリックバルブにするとそんなメリットがあるのか!」と思えますが、そうではありません。「仏式バルブにこんなデメリットがあるとは全く考えずに今まで使っていた」という方が正しいと思います。

私を含めて、多くの方が「空気圧低下の主因は、気体透過によるもの」と信じており、「バルブコアから微妙に空気が抜けている」とは考えていませんでした。100年以上も使われてきた仏式バルブコアにそんな弱点があるとは、誰も疑っていなかったということです。

しかし、今回の実験の結果から見ると、「仏式バルブを採用したチューブの空気圧低下のうち、半分はバルブコアから漏れていた」ということになります。

デファクトスタンダードたる仕組みに、実はセキュリティホールがずっと存在し続けていたことになってしまうのですが……。

また別の記事で、新世代バルブの比較を行おうと考えていますが、そこでもこの「空気圧低下」については触れる予定です。この記事を書いている現在はTopeak「Turbo Flow」の24時間静置実験をしています。果たしてどれくらい空気圧が落ちるのか……? 新世代バルブの比較記事にて報告いたします。

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著者情報

年齢: 41歳(執筆時)身長: 176cm / 体重: 82kg自転車歴: 2009年~年間走行距離: 10000~15000kmライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ばる

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。 趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。 【長距離ファストラン履歴】 ・大阪→東京: 23時間02分 (548km) ・東京→大阪: 23時間18分 (551km) ・TOT: 67時間38分 (1075km) ・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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