ビュフォンの針の問題と確率の導出
ビュフォンの針の問題と確率の導出- レベル: ◎ 大学数学その2
- 積分
更新 2025/10/12
ビュフォンの針平面上に間隔 ddd で平行線を引く。長さ l (≦d)l\:(\leqq d)l(≦d) の針を適当に投げたとき,針が線と交わる確率は 2lπd\dfrac{2l}{\pi d}πd2l
ビュフォンの針(Buffon’s needle problem)と呼ばれる有名な確率の問題を紹介します。円周率が登場するのが面白いです。
ビュフォンの針を使って円周率を求める
針が線と交わる確率は 2lπd\dfrac{2l}{\pi d}πd2l です(この式は後ほど証明します)。
確率に円周率が登場します。よって,実際に以下の例のようなビュフォンの針の実験をすることで,円周率の近似値を求めることができます。
実験の例係数を綺麗にするために d=2ld=2ld=2l として実験する。このとき針が線と交わる確率は 1π\dfrac{1}{\pi}π1 となる。例えば 100010001000 回針を投げてそのうち NNN 回が直線と交わった場合,
N1000≒1π\dfrac{N}{1000}\fallingdotseq \dfrac{1}{\pi}1000N≒π1 となるはず。
よって,1000N\dfrac{1000}{N}N1000 を円周率の値 π\piπ の近似値とみなせる。
確率の導出
それでは,針が線と交わる確率が 2lπd\dfrac{2l}{\pi d}πd2l であることを証明します。
証明を厳密に理解するためには大学の確率論が必要ですが,雰囲気は高校数学でも十分理解できます。
まずは証明に向けて,ランダムに投げた針の状態がどのようになるのか,確率の言葉を使ってきちんと解釈します。
投げた針の中心 AAA から最も近い線までの距離を yyy とします。
0≦y≦d20\leqq y\leqq \dfrac{d}{2}0≦y≦2d です。
また,針と直線のなす角を θ\thetaθ とします。
0≦θ≦π20\leqq \theta\leqq\dfrac{\pi}{2}0≦θ≦2π です。
yyy と θ\thetaθ は(連続型の)確率変数です。「ランダムに針を投げた」という言葉は以下のように解釈できます。
-
針の中心 AAA の座標はランダム (yyy は区間 [0,d2][0,\frac{d}{2}][0,2d] 上の一様分布に従う)
-
針がどの方向を向くかはランダム (θ\thetaθ は区間 [0,π2][0,\frac{\pi}{2}][0,2π] 上の一様分布に従う)
このような解釈のもと,針が線と交わる確率を求めてみます。
ビュフォンの針の確率の導出さきほどの図より, 針が線と交わる(共有点を持つ) ⟺ y≦l2sinθ\iff y \leqq \dfrac{l}{2}\sin\theta⟺y≦2lsinθ
よって,yyy と θ\thetaθ をランダムに決めたときに y≦l2sinθy\leqq \dfrac{l}{2}\sin\thetay≦2lsinθ となる確率を求めればよい。
「ランダムに yyy と θ\thetaθ を選ぶ」ことは「図の長方形内にランダムに一つ点を取る」ことに対応する。よって,求める確率は図において (青い部分の面積)÷(長方形の面積)である。
長方形の面積は πd4\dfrac{\pi d}{4}4πd であり,青い部分の面積は ∫0π2l2sinθdθ=l2\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{l}{2}\sin\theta d\theta=\dfrac{l}{2}∫02π2lsinθdθ=2l であるので,求める確率は 2lπd\dfrac{2l}{\pi d}πd2l となる。
針が長い場合の確率
ここまでは l≦dl\leqq dl≦d の場合を考えましたが,l>dl>dl>d の場合も考えてみましょう。
ビュフォンの針(針が長い場合)の確率ビュフォンの針において l>dl>dl>d の場合,針が線と交わる確率は
2lπd(1−1−d2l2)+1−2πArcsin(dl)\dfrac{2l}{\pi d}\left(1-\sqrt{1-\dfrac{d^2}{l^2}}\right)+1-\dfrac{2}{\pi}\mathrm{Arcsin}\left(\dfrac{d}{l}\right)πd2l(1−1−l2d2)+1−π2Arcsin(ld)
ただし,Arcsin\mathrm{Arcsin}Arcsin は sin\sinsin の逆関数です。→逆三角関数(Arcsin,Arccos,Arctan)の意味と性質
証明l≦dl\leqq dl≦d の場合と考え方は同じ。求める確率は図において (青い部分の面積)÷(長方形の面積)である。
ただし,θ0\theta_0θ0 は l2sinθ0=d2\dfrac{l}{2}\sin\theta_0=\dfrac{d}{2}2lsinθ0=2d を満たす。
長方形の面積は πd4\dfrac{\pi d}{4}4πd であり,青い部分の面積は ∫0θ0l2sinθdθ+(π2−θ0)⋅d2=l2(−cosθ0+1)+πd4−dθ02\begin{aligned}&\displaystyle\int_0^{\theta_0}\dfrac{l}{2}\sin\theta d\theta+(\dfrac{\pi}{2}-\theta_0)\cdot\dfrac{d}{2}\\ &=\dfrac{l}{2}(-\cos\theta_0+1)+\dfrac{\pi d}{4}-\dfrac{d\theta_0}{2}\end{aligned}∫0θ02lsinθdθ+(2π−θ0)⋅2d=2l(−cosθ0+1)+4πd−2dθ0 つまり,求める確率は 2lπd(1−cosθ0)+1−2θ0π=2lπd−2lπd1−sin2θ0+1−2θ0π=2lπd(1−1−d2l2)+1−2πArcsin(dl)\begin{aligned}&\dfrac{2l}{\pi d}(1-\cos\theta_0)+1-\dfrac{2\theta_0}{\pi}\\ &=\dfrac{2l}{\pi d}-\dfrac{2l}{\pi d}\sqrt{1-\sin^2\theta_0}+1-\dfrac{2\theta_0}{\pi}\\ &=\dfrac{2l}{\pi d}\left(1-\sqrt{1-\dfrac{d^2}{l^2}}\right)+1-\dfrac{2}{\pi}\mathrm{Arcsin}\left(\dfrac{d}{l}\right)\end{aligned}πd2l(1−cosθ0)+1−π2θ0=πd2l−πd2l1−sin2θ0+1−π2θ0=πd2l(1−1−l2d2)+1−π2Arcsin(ld)
非常に面白い方法ですが,円周率の近似の精度は悪いです(誤差を 110\dfrac{1}{10}101 くらいにするには投げる本数を 100100100 倍くらいにする必要がある)。
Tag:難しめの数学雑学・ネタまとめ
この記事の監修者マスオ
東京大学大学院情報理工学系研究科修了/2014年にWebサイト『高校数学の美しい物語』を立ち上げ/著書累計 50,000部突破/「わかりやすいこと」と「ごまかさないこと」の両立を意識している。 →著者情報・書籍一覧を見る
- レベル: ◎ 大学数学その2
- 積分