【Step by Step 手術手技】爪甲脱臼を伴う指挫滅創の初期対応|Schiller法・爪母癒着予防
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【Step by Step 手術手技】爪甲脱臼を伴う指挫滅創の初期対応|Schiller法・爪母癒着予防2025-09-21
注意事項:本記事は医療従事者向けの内容です。 患者さんへの説明や一般向けの治療指南ではなく、救急外来・形成外科・手外科領域の臨床現場で働く医療者向けに、正確かつエビデンスに基づいた情報を提供しています。 一般の方は必ず医療機関を受診してください。指導医
Table of Contents
ToggleQ & Aレジデント爪甲脱臼の時って、爪は戻さないといけませんか?相当汚くなければ戻したほうがいいね。爪がなければフィルムで代用。特に爪上皮とその直下の爪母に挫創がおよんでいる場合、上皮化過程で両者が癒着してしまって爪がうまく生えてこなくなってしまうからね。指導医 レジデントSchiller(シラー)法の抜糸は、いつ頃したらいいのでしょうか? 術後2〜3週が目安だね。上皮化してraw surfaceがなくなったら癒着しなくなるからね。指導医
はじめに- 指先の挫滅創に伴う爪甲脱臼(nail avulsion)は救急外来で頻繁に遭遇する外傷です。
- 適切な初期対応を怠ると、爪母と爪上皮の癒着により爪変形(翼状片形成)や機能障害を引き起こします。
- 本記事では、医療者が現場で迷わず対応できるよう、Schiller法による爪母癒着予防とフィルム代用法を中心に解説します。
解剖
爪甲(nail plate)、爪母(nail matrix)、爪床(nail bed)、爪上皮(eponychium)が重要。
爪母は爪の成長を担うため、損傷時には変形リスクが高い。
爪母と爪上皮の位置関係。Schiller法でここにスペースを確保することが重要。
爪甲脱臼を伴う指挫滅創の原因
- 指を機械や石に挟まれた際、強制的に引き抜かれる外力で発生。
爪根脱臼(proximal avulsion)だけでなく、爪甲が完全に剥がれる完全脱臼型もある。
典型的な爪根脱臼
診断と評価
- 骨折の有無を評価するために末節骨Xp撮影は必須。
tuft骨折で整復・固定不要例が多いが、開放骨折 vs 不全切断を見極めることが重要。
ポイント
開放骨折:指動脈1本以上が生存
不全切断:見た目はつながっていても、指動脈2本とも断裂
開放骨折と不全切断を区別できてない若手の先生が多いので注意しよう。開放骨折では指動脈は少なくとも1本は生きているよ。一方、不全切断では、どこかしらつながっているけど指動脈は2本ともやられてしまっているよ。指導医
処置のStep-by-Step
処置前:Xp撮影
- 末節骨骨折を合併することが多いため、まずXp撮影をする。
Xpで末節骨のtuft部に剥離骨折を認める。骨の整復・固定は不要である。
Step 1:局所麻酔
1%キシロカインで指ブロック麻酔。
指先への直接麻酔は激痛のため、基部にブロック注射。
Step 2:洗浄と止血
生理食塩水で十分に洗浄。
観察困難な場合は指タニケットを使用。
Step 3:皮膚・爪床の縫合
皮膚:5-0ナイロン
爪床:6-0PDSまたは6-0バイクリル(吸収糸)
糸をきつく結びすぎない。血流温存が最重要。
Step 4:爪またはフィルムの挿入
① 爪が残っている場合 → Schiller法
脱臼した爪根部を元の位置に整復。
水平マットレス縫合で固定。
② 爪が残っていない場合 → フィルム代用
ペンローズドレーンを加工して爪形に整形。
Schiller法と同様に固定。
爪上皮と爪母が直接癒着すると翼状片が形成され、爪の再生が妨げられる。
爪が残っている場合はSchiller法を選択する:5−0ナイロンで図の要領で水平マットレス縫合をする。
爪がない場合は、ペンローズドレーンやフィルムを加工して爪形に整形し、Schiller法と同様に固定する。
指導医爪根の脱臼整復が不十分なまま縫合されている例をしばしば見るよ。末節骨骨折を伴う場合は爪根の脱臼整復が不十分だと、末節骨の整復も不十分なことが多いよ。
Step 5:ドレッシング
ゲンタシン軟膏塗布後、アダプティックやエスアイメッシュで被覆。
包帯で軽く圧迫、冷却指示。
完全に爪が生えるのに約6ヶ月かかること、爪変形のリスクがあることを説明しておく。
処方例
ケフラールカプセル 250mg 1回1錠 毎食後 3日分
ロキソニン錠 60mg 1回1錠 毎食後 3日分
ムコスタ錠 100mg 1回1錠 毎食後 3日分
ゲンタシン軟膏 10g 1本
爪再生と予後
爪の完全再生には約6ヶ月を要する。
爪変形や再発リスクがあることを事前に説明。
コスト
- 創傷処理(K000)
まとめ
爪甲脱臼では、爪を戻すことが第一選択。爪がない場合はフィルムで代用する。
爪上皮と爪母の間に爪またはフィルムを挟み込み、癒着を予防することが重要。
Schiller法を用いて、脱臼した爪根部を確実に整復・固定する。
末節骨骨折の合併を確認するためにXp撮影は必須。
爪の完全再生には約6ヶ月かかり、変形リスクがあることを患者に説明する。
参考文献
- Rockwell WB, et al. Nail bed injuries. Plast Reconstr Surg. 1980.
Schiller WR. Nail bed repair and fixation. Hand Clin. 1990.
処置後には、外部からの汚染や摩擦を防ぐために指サックを使用すると便利だよ。指導医
リンク
処置直後に、患部が濡れるのを防ぐために防水カバーは便利だよ。指導医
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