<外来生物>前編 本当にワルモノなの?
<外来生物>前編 本当にワルモノなの? 2020年9月6日 05時00分 (9月7日 10時13分更新)名古屋城のお堀で捕獲されたアリゲーターガーの標本(手前)=愛知県碧南市の碧南海浜水族館で(同館提供)
人の手で国内へ
ワニのような細長い口。その中に鋭くとがった歯がずらりと並ぶ。二〇一七年に名古屋城(名古屋市)のお堀で捕獲された大型肉食魚「アリゲーターガー」の標本。現在、愛知県碧南市の碧南海浜水族館で展示されている。全長一三八センチ。当時は、わなを用いた捕物が展開されるなどして注目を集めた。 北米原産の外来生物で本来、日本の城のお堀にいるはずのない生き物。同館には、これ以前にも近隣の河川で捕獲された三匹のアリゲーターガーが持ち込まれた。同館の学芸員、地村佳純(よしずみ)さん(47)は「どれも飼育用に購入した後、成長して大きくなり、困った飼い主が逃がしたのでしょう」と話す。国は一八年、ガー科の魚を特定外来生物に指定し、現在は飼育や販売などは原則禁止だ。 外来生物は「もともといなかった国や地域に人間の活動によって持ち込まれた生き物」(環境省)。例えばウシガエルやオオクチバスは食料として、アメリカミンクは毛皮を採るため。アライグマやカミツキガメなどはペットとして持ち込まれた。日本には国外からの外来生物が二千種類以上いるとされる。 最近では航空機や船舶など交通手段が発達。旅客の服や荷物にまぎれ込んだり、船体やコンテナに付着したりして、生き物が本来は移動できるはずのない遠隔地にまで運ばれてしまうようになっている。生態系崩す恐れ
外来生物が問題になるのは、もともとその地域の生態系に存在しない生き物が持ち込まれると、生態系のバランスが崩れるなどして生物多様性が失われる恐れがあるからだ。すべての外来生物が問題を引き起こすわけではないが、農林水産業に被害が生じたり、人間に危害が及んだりするケースもある。 一九九五年には毒グモのセアカゴケグモが国内各地で発見され、騒動に。最近、話題になっているのは強い毒を持つヒアリだ。二〇一七年に兵庫県で初めて見つかって以来、発見例は十六都道府県に拡大。刺されると人が死に至る危険があり、対策が急がれている。原因作った人間 どう向き合う
「外来生物」という字面や、アリゲーターガーのようないかつい姿を目にすれば、生き物が悪く見えてしまうが、国内に入り込む原因を作ったのは人間だ。それなのに捕獲や殺処分の対象にされる生き物からは、こんな問い掛けも聞こえてきそう。「生態系を守りたいなら、駆除の対象は自分たちではなく、原因を生み出している人間ではないのか」。さて、どう答えれば良いだろう。 外来生物法が対象とするのは「人間の移動や物流が盛んになり始めた明治時代以降に海外から日本に導入された生き物」(環境省)。それ以前に持ち込まれた生き物は対象外となる。スズメやモンシロチョウ、シロツメクサも歴史を溯(さかのぼ)れば、海外が起源とされる。だが、明治より前のため、同法の枠外。生き物に「そんな線引き、勝手すぎる」と抗議されたとしたら、どう説得できるだろう。外来生物法 2005年に施行され、問題を引き起こす海外起源の外来生物を「特定外来生物」に指定。現在、148種類の動植物などを指定し、捕獲や殺処分を推進。許可なく野外に放ったり、植えたりすることや飼育、栽培、運搬、保管、輸入、販売などを禁止。違反すると最大で個人は3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金が科される。
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