いのちの未来 石黒浩 X02 シグネチャーパビリオン【EXPO2025】
ロボット学者の石黒宏氏がプロデュースしたパビリオンです。人間がアンドロイドやロボット等のアバターと共に暮らす未来体験ということでテーマは「いのちを拡げる」
私はこのテーマを聞いて、「いのち」つまりは生き方をも多様化していく未来を感じました。
ブラックボックスを思わせる真っ黒な外観
まず驚いたのはパビリオンの外観。「いのちの未来」というとSFを想像します。SFの世界と言えば、アポロの月面着陸までは銀ピカ、そして、2001年宇宙の旅で白が定着します。
しかし、「いのちの未来」パビリオンは真っ黒なのです。私は開けてはならないブラックボックスのような気がしてなりませんでした。
内部に入ると外観の黒とは裏腹に、上手に光を取り込むようになっていました。黒の外観の為、熱がこもるのではないかと危惧しましたが、冷房の効きは良く、建物の外側に絶えず水が流れていることが冷却装置の役目を果たしているのかもしれません。
第一展示 太古からの像や人形は人間の憧れの象徴
アンドロイド、ロボットと言うと近代的なものばかり想像しますが、プロデューサーの石黒氏は数千年前の埴輪や土偶も当時の先端技術によるロボットの系譜と考えたように感じました。その為、仏像や文楽、そして人間と見間違うような最新のAndroidまでが並べて展示されていました。
それらの展示を後にすると、私たちの親から子、子から孫というようないのちの継承、そして思い出の写真群を見ながら進みます。
そうしてやって来たのは未来列車のような部屋。そこには鉄腕アトムやスターウォーズで出て来そうなロボットが動き回り、アンドロイドが既に列車の席に座っておりました。
彼らと一緒に列車に乗りながら、私たち観客はどこかに行くようです。その間、先ほど写真群で見た子と孫も同じ列車に揺られるような映像が流れ、私たち観客はいのちの未来へと進んでいきます。
思い出の部屋と禁断の部屋
第一展示から未来列車への移動途中に見た写真群の映像バージョンを見ることができます。何だろうと不思議に感じるのは、登場するのが孫と祖母ばかりだからです。
疑問が募りながら進んでいくと、障子の向こうに完全なるアンドロイドが覗き見できます。全員が覗くような作りでないので、さっさと進む人は見逃してしまうような禁断の部屋。まるで見てはいけない「鶴の恩返し」の鶴の機織りシーンのようです。
全てが解き明かされる映像
次に向かった部屋は小さな映画館のような部屋。そこで孫の祖母のストーリーが解き明かされます。
祖母と娘が登場し、さぁこれから出産というシーンで始まります。祖母は娘を送り出し、未来の鏡で健康チェック。鏡に映る姿はアンドロイドのようです。既に祖母は未来の医療のお陰で健康維持を保っているようです。
画面は変わり、祖母と犬が椅子で待機しているシーン。ふと、子供とお父さんが抱き合うシーンが挿入されます。このシーンの父親の耳が赤く光っています。彼は頭のどこかが機械になっているようです。祖母は現在と未来を行き来して、物思いに耽っているのです。そして、スタッフの呼びかけに応じ、笑顔で立ち上がる祖母。そして、孫を抱く祖母。お孫さん誕生シーンなのでしょう。ハッピーバースデーと西暦2061年の文字。
いきなり、孫は大きくなり誕生日のシーンになります。何か映画でも見ているのでしょうか?非常に楽しそうです。祖母、犬、父親、そして友人でしょうか?が見られますが、母親の姿がありません。ふと孫娘が走り出し、嬉しそうに会話をします。それは母親の立体画像だったのです。
ここで、母親が亡くなっている事が伝わります。立体映像の母親が消滅し、孫娘はしょんぼりします。そこに祖母が励ましに現れます。
その晩、孫娘は泣いてぐずります。祖母は孫をあやし寝かせます。そして真っ赤なマニキュアでピアノを奏でます。このシーンは祖母が若々しく保って母親の役目を果たす意気込みが凝縮されています。
祖母の健康に限界
シーンは医療のアドバイスへと変わります。それは祖母の健康維持に限界が来たことが伝えられます。もう少し孫の成長を支えてあげるには祖母はAIになって生き続けるかそれとも自然に任せるか。自然に任せるというのは亡くなることを示唆しています。
場面が祖母が孫の誕生を待つシーンと同じ風景に変わります。ただ、祖母ではなく育った孫が腰掛け、犬はいません。
祖母が出産を待つ時と同じように、小さな女の子とお父さんが抱き合うシーンが流れます。その父親は耳だけでなく、眉間も赤い光が灯っています。
それを見て孫娘は見つめています。祖母にああしてアンドロイドになって生き続けてほしい。その孫娘を優しく見つめ、首を振る祖母。「私はあれは嫌。」そう首を振っているように見えます。孫娘は悲しそうに立ち去ります。そして、祖母は再度悩みます。最後はアンドロイドとして記憶だけ残し、孫娘のために自分を残してみよう!そう決心します。そして、家に一人待つ孫娘。チャイムの音が鳴り、出迎えようとするところで物語は終わります。祖母がアンドロイドとなって帰ってきたのか?そこまでは描かれずに映像はフェードアウト。
いのちの未来をこのパビリオンは様々な面から考えさせられます。
祖母の視点
祖母は早くに亡くなってしまった娘の代わりに母親代わりを努めます。母親を恋しがる孫に寂しい思いはさせまいと色んなところに遊びに出掛けた祖母。単に自分が長生きしたいわけではなく、孫の事を考えると自分が母親代わりでなくてはと思っています。また、現代医療ではAIなどを駆使し永遠に生きているように見せることも可能です。それが本当に良い事なのかという疑念もあり、祖母は悩んでいたようです。
亡くなった母親の願い
頼れるのは自分の母親。つまり祖母。祖母にはどんな事をしても娘を見届けてもらいたい。そう願って亡くなったのでしょう。その想いは今も同じ。その想いがプロンプトに組み込まれているせいで、祖母の自然タヒを簡単に受け入れることはできません。彼女の気持ちを考えると、AIになることと自然のままに任せること、どちらがより優しい選択なのか、という問いに直面します。非常に難しい問題です。
孫娘の思い
この映像では孫娘の思いを汲み取るのは難しいですが、誕生祝に登場していた犬がいない事を考えると、別れの悲しみは体験しているように思います。だからいのちの最後も知っているでしょう。祖母が分からないうちにAIになっていた事を後で知ることと、自然に任せて別れること、どちらが残酷と感じるだろうか?
まとめ:未来のいのちのあり方
現代は癌となるとほとんど本人に宣告するようになったと思います。しかし、約半世紀前は癌告知はしてはならない風潮がありました。そして実際、そのような映画やテレビドラマが横行していました。
これからの科学を用いていのちを維持することは、亡くなりたくないと思う人の延命だけでなく、残された人がある程度耐えられるようになるまで、生きているように維持するアンドロイドが出てくるかも知れません。
最後の3人の未来のアンドロイド。あれは家族全員が機械になって生き続けるように見えるあり得る未来の姿かもしれません。
「いのちの未来パビリオン」は、今回のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に完璧にマッチしていると感じました。素晴らしかったです。
万博太郎の★評価(5段階)印象に残るか:★★★★★
展示の完成度:★★★★★
リピートしたい度:★★★★★
高齢者対応:★★★★★
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