NHK森本アナ事件「夫が痴漢で逮捕」妻の決断は? 即刻離婚?それとも一度だけなら許す?夫婦が試されるとき
2012.12.05- #雑誌
週刊現代
講談社
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なんであの人が?森本アナもそうだが、痴漢で逮捕されるのは普段真面目な人が多いという。だから妻はなおさらつらい。会社に言うべきか、子供にどう伝えるか。夫を救うも見捨てるも、すべては妻次第。
悪夢のような一本の電話JR新浦安駅近くのベイエリアにそびえ立つ高層マンションで、NHKの森本健成アナ(47歳)は妻、息子、二人の娘と幸せに暮らしていた。
あの夜までは---。
11月14日午後8時前、森本アナは東急田園都市線で11分間も23歳女子大生の胸を揉み続け、強制わいせつ容疑で現行犯逮捕された。
森本アナの帰宅を待っていた妻に、逮捕を知らせる電話がNHKから入ったのは、その数時間後だった。
「奥さん、落ち着いて聞いてください。森本が警察に逮捕されました」
NHK関係者によると、逮捕容疑が電車内での痴漢だと知り、森本アナの妻は「本当ですか?」と呻いて絶句したという。
-AD-逮捕翌日の午後2時頃、大きな荷物を抱えて出かける妻の姿が近隣住民に目撃されている。着替えを玉川署に届けるためだった。
「玉川署による取り調べの最中で、容疑をまだ認めてなかったから、奥さんは容疑者に会えなかったはずです。強制わいせつの場合、容疑者が否認すると自宅にガサ(家宅捜索)を入れることがある。証拠隠滅の指示をされる恐れがあるので、否認の段階で被疑者と奥さんを会わせることはない」(警視庁捜査員)
東京地検は「逃亡の恐れがない」として16日に森本アナを釈放したが、捜査は続いている。本誌の取材に、妻はこう語った。
「(夫のことで)お騒がせしてすみません。私は何もわかりませんので、もし何かお知りになりたいことがあるなら、NHKにお聞きください」
妻の言葉から、森本アナのケースは、家族ではなくNHK主導で事後処理をしていることがわかる。
森本アナが朝番組の司会を務める「有名人」で、NHKが局のイメージをこれ以上損ないたくないからだが、企業に勤めるサラリーマンの場合は、家族が事後処理に奔走することになる。痴漢事件に詳しい桐生貴央弁護士が言う。
「通常は、奥さんには警察から淡々と連絡が行き、そこでパニックに陥ることになります。冤罪にせよ、本当にやったにせよ、痴漢で捕まると社会的地位を失う可能性がかなり高い。奥さんが一人悩んでも状況は好転しないので、一刻も早く信頼できる弁護士に相談するべきです」
男女トラブルの相談を数多く受けてきた長谷川裕雅弁護士もこう続ける。
「真面目なサラリーマンが強盗殺人の容疑者になる事件はまず聞かない。でも、性犯罪の容疑者になる事件は掃いて捨てるほどあります。どんなに真面目な人間でも、性欲という本能的な欲求と無縁でいられないからです。
世の中に男と女がいる限り、冤罪も含め、痴漢は他人事ではないと肝に銘じるべきでしょう」
だからこそ、男性諸氏は「その時、妻がどうなるか、どうするか」の実例を知り、法律の専門家の意見に学んでおいたほうがいい。
子供に伝えるかどうか今から10年前、父親が痴漢で捕まったという男性Aさん(35歳)は、家庭内の実情をこう明かす。
「母親は私には捕まったことを打ち明けましたが、妹には『入院していた』で押し通しました。父はクビにはならなかったけど、逮捕の事実は会社にバレたようで、地方に左遷。母は『お父さんはやってない』と当初は言っていましたが、『でも信用できなくなる瞬間もある』と、私の前で泣くようになりました。
あれ以来、父と母の夫婦関係にはヒビが入ったままです。本当に父が痴漢をしたのか、それも謎のまま。普段は真面目な父だっただけに、森本アナの事件の報道を見ても、他人事とは思えないです」
-AD-Aさんは成人していたので、母親も苦悩を打ち明けたが、子供たちがまだ小さい場合は完全に内緒にするケースが多いという。
「日本人の道徳観念として、数ある犯罪のなかでも性犯罪は特に恥ずかしい、という意識があります。今後、子供を教育するなかで、父親が性犯罪者では何を言っても説得力がないどころか、逆に反発されるでしょう。女の子なら特にそう。だから、子供にはあえて言う必要はないと私は思っています」(長谷川弁護士)
夫婦・家族問題コンサルタントの池内ひろ美氏は、夫が痴漢をした夫婦の相談もこれまで多数受けてきた。許すという決断をした場合も、その後「円満夫婦」にはやはり戻れないと、池内氏は言う。
「夫婦ともに40代半ばで、旦那さんが大手企業勤務、年収1200万円、奥さんが専業主婦で中学生の一人娘がいる、というケースがありました。
この夫婦の場合、やはり娘が『お父さんは不潔』と思ったのが致命的でした。『恥ずかしくて学校に行けない』と、世間体を気にする母親と同調して父親を責め立てた。『受験に失敗したのもお父さんのせいだ』とまで言われても、父親は『すまなかった』としか言えなかった。
私は、このままだと娘さんは愛されない女の子になってしまう、たとえ痴漢をしても、娘の前で父親を悪く言うべきではない、と奥さんにアドバイスをしました。すでに社会的制裁は受けた。家族が許さないと救いはありません」
慰謝料が跳ね上がる離婚を回避できたのは、妻の父親が「やってはいけないことだが、同じ男として、酔って触りたくなる気持ちもわかる。俺にもそういう気持ちはあった。子供のためにも離婚するべきではない。許してやれ」と妻を説得したことが大きかった。妻の家族が「そんな男とは離婚だ」と騒ぎ立てると、ほとんどが即離婚、という展開になる。
「ただ、離婚は回避できたとはいえ、元通りの生活には戻れないのが現実です。家族でテレビを観ているとニュースでもドラマでも痴漢の話題がかなりの頻度で出てくる。そのたびに、微妙な空気が流れるわけですから。でもギリギリのところで家族を続けている、珍しいケースです」(池内氏)
痴漢そのものより、それによって性癖がバレ、離婚に至るケースもある。
子供のいない30代の夫婦で、夫が50代女性の尻を触って捕まった。弁護士の前で展開される夫婦の会話は、深刻な状況と裏腹にコントのようだった。
妻「気持ち悪い。女だったら誰でもいいの」
夫「いや、誰でもいいわけではない」
妻「じゃあ、何であんなオバサンを触るのよ」
-AD-夫「実は50代以上、特に60代の女性にセックスアピールを感じるんだ」
妻にとっては青天の霹靂、二重のショックだった。この夫は「君の言う通りすぐに別れる。お金も欲しいだけ渡す。その代わり、親には言わないでくれ」と頼みこんだ。妻は貯金を全額もらうことを条件に、即刻離婚に踏み切った。
「事件後、夫婦の関係がどうなっていくかは、愛情、経済力、世間体という三つの要因が絡んできます。会社をクビになった場合、経済的な理由で離婚される方もいるし、逆に仕事を失わずに済み、愛情はなくなったけど仕方なく夫婦を続ける奥さんもいる。また、愛情はあるけど世間体を気にして離婚し、引っ越して同居を続ける方もいる」(みずほ中央法律事務所の代表弁護士・三平聡史氏)
ちなみに痴漢が原因で離婚となると、慰謝料が跳ね上がる。相場は200万~300万円だが、夫に支払い能力があると500万円という高額慰謝料になるケースもある。
「痴漢が原因だと、そもそも対等なケンカになりません。財産分与についても、妻が『この家はもらいます』と主張したら、ローンが残っていても明け渡す男性が多い」(桐生弁護士)
弁護士たちが口を揃えるのは、出来心で痴漢して捕まった場合、「否認してもロクなことがない」という事実だ。前述のように自宅を家宅捜索され、家族をより傷つけることになる。
「たとえば未成年者を盗撮して捕まったのにとぼけていると、警察は悪質と判断して、ガサ入れでロリコンAVなどを押収しようとする」(桐生弁護士)
ミラーマンと呼ばれた著名エコノミスト・植草一秀氏のケースもそうだったが、当人が否認すると、警察はその人物の「性癖」を物証によって暴こうとする。
否認のデメリットは他にもある。
「否認している限り、釈放も保釈もされず、家に帰れません。もちろん会社にもバレるし、妻や家族に多大なる負担を強いることになる。やったならやった、と素直に認めたほうが絶対にいい」(桐生弁護士)
身に覚えがあるなら、「有能な弁護士をつけてクロをシロにしてやる」などと考えず、警察の取り調べに事実を述べることだ。痴漢で逮捕され、罪を認めても、会社にバレずに済んでいる実例はたくさんある。
ただし、そのためには妻の協力が不可欠だ。
「サラリーマンにとっては会社をクビにならないことがすごく重要。逮捕翌日、奥さんが最初に直面するのは『会社にどう伝えたらいいか』という悩みです。
私は奥さんに、『勾留されるかどうか決まるまでの2~3日は入院で通してください』とアドバイスしています」(長谷川弁護士)
-AD-少々の病気で妻が会社に連絡するのは不自然。「胸が急に苦しくなったようで、念のため検査入院しております。ご迷惑をおかけします」と曖昧に伝える。
妻がこうした演技を買って出てくれるか、それは普段の夫婦関係が重要であることは言うまでもない。
「あんな人のためにウソをつきたくありません」
妻にそう決断された時点で、あなたの会社人生は終わる。
どうせやるなら金曜日?勾留されるかどうか決まるまでの2~3日、一体何が行われるのか。長谷川弁護士が解説する。
「夜の電車で逮捕された場合、翌々日に警察から検察庁に送致され、さらにその翌日、裁判所で勾留質問を受ける。ここで勾留されるかどうか決まるわけです。
弁護士は被害者との示談交渉も含め、勾留されないための活動を一生懸命やるわけですが、その前に『痴漢で捕まりました』と会社に告げてしまい、戻れるチャンスを潰してしまった奥さんもいました」
「警察から会社に直接連絡がいくだろう」と思う人が多いが、基本的にそれはない。「痴漢で逮捕」という極度のプライバシー情報を、第三者に伝える権利は警察にはないからだ。
例外は、森本アナのような報道機関と、超有名企業の管理職。これについては警察から「非公式に」マスコミに伝えられるケースが多い。
「森本アナの場合は、逮捕当日の深夜に玉川署がNHKの幹部を呼び、事実を伝えました。そして、他局に抜かれる前に、NHKみずから翌日の昼ニュースで報道したんです。その時点で警察はまだ公式発表していなかった」(NHK関係者)
超有名企業の幹部でない限り、警察からマスコミや会社に漏れる心配はない。だからこそ、妻の口からわざわざ会社に伝える必要もない。
さらに言えば、裁判所の勾留質問より前に釈放される「裏ワザ」もある。
「送検された後、検察官の取り調べにも素直に罪を認め、略式起訴で罰金を支払う。これが最も早く釈放される方法で、罰金の相場は約30万円です。この際、奥さんから『ウチの旦那は真面目な人で、出来心でやってしまった。今後は私が責任を持って反省させ、二度と痴漢はさせません』と上申書を出すと、検事の心証がよくなります」(痴漢に詳しい弁護士)
夫のために上申書が書けるか、これが妻の「第二の決断」となる。何せ、この時点ではまだ、痴漢をした夫と直接話せないから、責めることも問いただすこともできない。ハラワタは煮えくり返っている。
「一度だけなら許す」
-AD-と決断できるかどうか、妻の行動はそこにかかっていると言える。
極端な例を挙げると、金曜日の夜に逮捕され、日曜日に送検されて即、釈放となったら、月曜日の朝何食わぬ顔で出社することも理論上は可能だ。痴漢事件を手がける弁護士が、
「どうせやるなら金曜の夜にしたほうがいい」
と冗談半分で語るのも、そこに理由がある。
夫を助けると決断し、おかげで会社もクビにならずにすんだ。しかし、家族にとって真の試練がそれから訪れるのは、先ほど挙げた実例の通りだ。
酒に酔い、思わず目の前の胸や尻に手が伸びそうになったら・・・・・・、妻がどんな決断をするか、それを思い浮かべるのが、いちばんの抑止力かもしれない。
「週刊現代」2012年12月8日号より
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