エゾマツ(蝦夷松)の育て方
エゾマツ(蝦夷松)の育て方投稿日:2016/01/13 更新日:2020/12/28
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エゾマツ(蝦夷松、学名:Picea jezoensis )はマツ科トウヒ属の常緑針葉高木。
北海道や千島列島などの北国に自生している樹で寒さに強く、短い葉が密生し幹肌が荒れやすいところが好まれます。
霧深く湿度の高い環境を好み、乾燥や大気汚染には弱い性質があるのでやや培養が難しいと言われますが、環境変化への順応性があるので、苗木から慣したものは温かい平地でも育ちます。
本来丈夫な樹種なので、特性を知り夏の管理さえ万全にできれば長く保ち込むことができます。
C o n t e n t s
- エゾマツの培養の基本(管理場所、灌水、施肥)
- エゾマツの病害虫と対策
- エゾマツの適期作業
- 関連ページ
1. エゾマツの培養の基本
管理場所寒冷地に自生する樹で、亜高山帯林の主要樹種であるトドマツとともに「北海道の木」に指定されています。
暑さや乾燥には弱い面がありますが、環境変化への順応性も備えているので、若木のうちから慣せば暖地での培養も可能。
日差しの強くなる5月~6月頃から9月中頃までは風通しのいい日よけの下で管理し、乾燥や暑さから守ってあげてください。特に小品サイズのものは環境の変化に影響を受けやすいので注意が必要です。
寒さへの耐性は持っていますが、からっ風や霜に当たると枝枯れを起こしますから、厳寒期(12月~2月頃)は棚下の日だまりやムロ内で保護しましょう。
灌水エゾマツは一年中、高い湿度の中で生育しているような樹で、他の松柏樹種の中でも特段に水を好みます。
四六時中過水状態では根が傷みますが、特に新芽の伸びる時期は多くの水を欲しがりますし、梅雨明けから夏場にかけては乾きも早いので、水切れには特に注意が必要です。葉水や霧吹きも樹勢維持や回復にいいですから、朝夕与えてください。
春と秋は1日2~3回、夏は3回が目安ですが、乾き方は棚場環境やサイズによりますから、表面の土は白く乾いてきたら水やりするようにしましょう。
また、根詰りしているものは水をやったつもりでも内部が部分的に乾いている事がよくありますから、2~3日に1回は鉢ごと水にどっぷり漬けて、鉢の隅々まで水が行き渡るようにしてください。水に沈めた時にブクブクと気泡が浮いてくるようなら中が乾いている証拠です。
冬はムロ内で保護していれば4~5日に1回くらいでもよくなりますが、そう思って油断すると水切れすることがよくあります。
冬の乾燥した外気や風が想像以上に乾きを早めますし、冬の水切れはそのまま枯死につながる危険性が高まるので注意してください。
施肥どちらかというと肥料を好む性質で、肥料の効いていないものは芽吹きも悪く枝枯れを起こしやすくなります。ただ多肥への害も生じやすい樹なので、仕立て段階や樹勢をみて調整してください。
基本的には幹太りを期待したり、芽摘みや剪定で枝を作る養成木は肥料を多めに効かせ、維持の段階へいくにつれて控え目にしていきます。
樹勢の落ち着いた完成木や古木に多く肥料を与えると、枝が暴れて樹形を崩してしまいますから、特に春の肥料は控えめを心がけてください。
施肥の時期は新芽の動き出す直前の3月から5月頃の間と、9月~11月の間に月1回のペースで肥料を追加・交換します。梅雨~夏の間は中止することもありますが、ごく控え目に継続すると葉色が保たれます。油かすの代りに2000倍以上に希釈したハイポネックスを与えてみてください。
肥料には油かすの置き肥がメイン。秋は春肥よりしっかり効かせることが大事で、骨粉を2~3割追加して冬越しと翌年の芽吹きのための力を蓄えさせてあげましょう。
2. エゾマツの病害虫と対策
ほとんど病害虫の被害にあうことはないですが、新芽にハマキムシや葉ダニ類が付くことがあります。
風通しの悪い場所では虫もつきやすくなりますから、培養環境を見直し、発生時期にはベニカやマラソン乳剤などの有効薬剤を散布して予防してください。
病気はほとんどなく、むしろ夏場の無遮光や過湿、過乾による根腐れで調子を崩す場合が多いようです。
3. エゾマツの適期作業
エゾマツの作業カレンダー
3月 4月 5月 6月 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 冬期保護 植替え 剪定 芽摘み 針金掛け 施肥 7月 8月 9月 10月 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 古葉取り 施肥 11月 12月 1月 2月 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 冬期保護 剪定 剪定 針金かけ 針金掛け 施肥 植替え(3月中旬~4月上旬)エゾマツは弱くて培養が難しいと言われることがありますが、ほとんどは植替えでの失敗によるものです。
樹勢を落とさず培養するには植替え適期を守ることが大切で、時期を逃すと回復に1~2年を要することがあるので注意してください。
植替えは新芽に苞皮がまだ被っている状態がよく、この状態ではやや遅い(上部の芽)
作業適期は新芽が動き出す直前で、固い新芽がやや膨らんでまだ薄い苞皮を破らないうちがベスト。関東地方では3月中下旬頃で、苞皮を破って新芽が伸び出す頃にはもう新根の活動が始まっていて遅いですから、必ず時期を守ってください。
適期を逃してしまったら、新芽が固まる7月頃でも植替えは可能ですが、できれば翌年の最適期に廻すことをお勧めします。
根のほぐし方は他の松柏類と同じで良いですが、あまり深く切ると回復に時間がかかります。全体の1/3を目安に鉢の周りの古土を丁寧に落とし、強く伸びた根を根分かれの所で軽く切り込む程度にしておいてください。
植込む時にも根を傷付けないことが大事で、優しく巻き込むように丁寧に入れ、土もあまり硬く込めないようにしましょう。
用土は赤玉6~7に桐生4~3を目安に、適度な保水性と排水性のいいものを使うように心がけます。水やりが多い人なら、川砂を2割ほど混ぜてもよいでしょう。
植替え後は表土にミズゴケを張って乾燥予防。すぐに温かい棚上に置いて鉢を温め、発根を促してください。季節の変わり目は風が強く、空気もまだ乾燥しているので、吹きさらしを避けた日だまりの場所を用意してあげましょう。多少の霜に当たっても平気ですが、小さい樹は夜間は棚下に移しておいてください。
エゾマツはゴヨウマツと同様に、根を切られるのが嫌いで、あまり頻繁に植替えをすると樹勢がいつまでも上がらないので、植替えの間隔は若木でも3~4年に1度で充分です。
芽摘み(5月上旬~6月中旬)エゾマツの新芽は4月中旬頃から5月中旬頃にかけて伸びてきます(関東基準)。
その芽出しの美しさはカラマツに引けを取らない程で、つい芽摘みを惜しんで適期を逃してしまいますが、芽摘みをしないと枝が間延びして胴吹き芽も動かず、小枝も増えませんから惜しまず摘むことが大事です。
他の松柏樹種ほど伸びる力は強くないので、春の芽摘みだけで一年の小枝作りがだいたい済んでしまいます。
芽摘み適期の新梢(5月東京)
芽摘みの時期は5月上旬から6月中旬頃。芽摘みが早すぎると枝に力が付きませんから、ある程度伸ばして必要な長さで摘みます。
葉が開いてまだ伸びる余裕があると思われる状態が芽摘みのタイミングで、完全に伸びきってからでは2番芽の動きが悪くなりますから注意してください。
爪を立てると芽先が赤茶色に変色して見た目がよくありませんから、摘みたい所を指の腹でつまんで引き抜くように持ち上げて摘みます。上部の強い芽ほど先に伸びてきますから、伸びた順に必要な長さを残して摘んでください。
枝数を増やす段階の養成木の芽摘みは、新梢の1/2くらいを目安に摘みます。通常よりも気持ち伸ばし気味にして勢いを付けてから摘むことで、基部からの胴吹きを促して枝数を増やす効果が期待できます。
最初の芽摘み後に元から伸び出す2番芽も、同じ要領で伸びたら必要な長さを残して摘んでください。樹勢の強いものは6月中旬頃まで2~3回の芽摘みを繰り返して小枝を増やすことができます。
維持の段階の完成木では、新梢の1/3を残すように短めに摘んで伸びを抑えます。ただし、下部の弱い枝や、伸ばしたい枝がある場合は長めに摘むか芽摘みを控えるなど、目的によって加減してください。
もともと伸びの弱い八房種は、細かい芽摘みよりも剪定に重点を置いた方が案外作りやすく、樹勢も維持できます。
剪定(2月下旬~3月、11月)エゾマツは成長が遅く、他の松柏樹種ほど枝の伸びも早くないので、しょっちゅう剪定の機会があるわけではありません。剪定の適期も11月~3月頃(厳寒期を除く)と限られているので、成長期の間は充分に枝に力を付けておいて、適期にしっかり切ることが樹勢を落とさないポイントです。
エゾマツの剪定はこれから樹形を作ろうとする養成木への「不要枝の剪定(切り込み)」が主で、完成木では時々「間引き剪定(切り透かし)」をする程度で大きな剪定は必要なくなってきます。
樹勢のついた養成木は切り込むと胴吹きもしますが、樹が古くなれば芽吹く力も弱くなるので、エゾマツの枝を切り戻す場合は必ず芽や小枝のある部分で切るようにしてください。
適期以外に枝を強く切り込んだり、無理な矯正をすると樹がガッカリしていじけることがあり、そうなると回復までに数年を要していつまでも作があがりませんから注意してください。
養成木の剪定八房種のようにあまり大きくならずに自然に形ができるものは、下手に作り込まずとも保ち込むだけでそれなりに見られるようになりますが、模様木や文人木にできる素材は枝が多いと反って盆栽らしさを失ってしまいますから、樹形作りの上で邪魔になるような不要枝や徒長枝から整理してください。
一箇所から複数の枝が出やすいので、使う枝以外は基本的に全て切り取る
エゾマツの枝は一箇所から複数の枝が出る(車枝)性質があるので、使う枝を残して他の弱い枝は元から切り取っておきましょう。
不要な枝を抜くことで、残した枝に力が集中して枝太りが期待できます。
ただしエゾマツの場合は無理をすると急にいじけることがあるので、一度に多くの枝を抜くのではなく徐々に整理していったほうが無難です。
不要な太枝がある場合は元から切らずに適当な長さを残しておいて、枯れてきたらジンに仕立てると古木の風韻が現れてきます。
針金かけ(2月下旬~3月、11月)エゾマツの幹枝は粘りがありよく曲がるので針金掛けはしやすいのですが、その弾性が邪魔して針金が効きにい性質があります。
幹太りの遅い樹種なので1~2年掛けたままになりますが、よく肥培した若木は案外に食い込みも早いですから、1年も経たずに掛け直しが必要になる場合もあります。
針金かけの適期は、剪定と同じ。寒さの和らぐ2月下旬から芽出し前の3月頃が好機で、作業後の保護が万全にできれば11月頃も適期です。
針金をかけが出来るのは充分樹勢がついて枝もある程度充実した樹が対象で、その樹の個性(根張りや枝振り、もともとの模様や流れ)を活かした無理のないエゾマツらしい整枝を心がけてください。
エゾマツは枝を下げることには強く、どちらかというと男性的な幹枝が持ち味となる樹なので、「雪落ち」の風情を出すように枝を鋭角にしっかり下げると古木の風情を現すことができます。
その反面、持ち上げたり捻ったりすると枝枯れしやすい特徴があるので、どうしても捻る必要がある場合は、長い区間で大きく捻るようにしましょう。
古葉取り(7月~8月)3年枝についた古葉はやや黄変して取れやすい状態に。そのまま自然落葉するが適宜掃除して蒸れを解消し、生育の手助けを。
葉刈りや葉すかしは基本的に不要ですが、フトコロに古葉が多く残っている場合は、7月~8月頃に古葉取りをすることがあります。
エゾマツの古葉取りは主に古々葉(3年葉)が対象で、若い葉より少し黄味かかり褪せた色をしている葉をピンセットで落としてください。
ピンセットでつまんで少し揺すれば簡単に落ちる状態になっているはずですが、取れない場合は時期に拘らず気がついた時に掃除するようにしてください。
古々葉(3年葉)を落とす前と後。やり過ぎると枝枯れする事があるので、無理せずこのくらいに留めておいた方が安全
古葉取りをすることで夏場の蒸れや、フトコロ環境を改善し、下枝や弱い芽を保護することができます。古葉がなくなると枝筋がはっきりみえ、針金かけや剪定もしやすくなりますから、剪定整枝の前に古葉が残っている場合も必要に応じて掃除してください。
ただし無理に引っ張ると樹皮を傷付ける危険がありますし、一度に多くの葉を取ると樹勢を落とすこともあるので無理は禁物です。
針金掛けや芽摘み、剪定などの手入れ全般に言えることですが、樹の特性や樹勢を無視して自分の思い通りに作ろうとしないで、その樹の生育の手助けをする気持ちで手入れができれば樹も応えてくれます。
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