【フィギュア】なぜ…りくりゅうリフトでミス「練習でも見たことない」コーチ見解、逆転のカギは
ペアSPの演技を終え、得点を待つ三浦(中央)、木原組。右はブルーノ・マルコット・コーチ(撮影・前田充)<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇ペア・ショートプログラム(SP)◇15日(日本時間16日)◇ミラノ・アイススケートアリーナ
【ミラノ=木下淳】世界王者の三浦璃来(24)木原龍一(33)組(木下グループ)が5位と出遅れた。中盤のリフトで乱れが出て、まさかの今季ワースト73・11点。翌16日(日本時間17日)のフリーで、自己新の80・01点で首位に立ったミネルバファビエンヌ・ハゼ、ニキータ・ボロディン組(ドイツ)を6・90点差で追う展開となった。
なぜ、世界一の2人が得意とするリフトに、ミスが出たのか。
本人たちと同様、信じられない様子だったカナダ人のブルーノ・マルコット・コーチ(51)が日刊スポーツなどの取材に応じ、見解を示した。
まずは「ビデオのスロー映像を見直さないと分からないけど、練習中にこんなミスを見たことがない。1度もない。1度も」と驚いた。
焦点のリフトについて質問されると「あのミスが出た時は、技術的なことよりも、どんなレベル(判定=最高4)になるかに意識が向いていたんだ。でも、何が起こったのかを本当に理解するためには、もう1度(映像を)見直さなければいけないね」
りくりゅうは、世界王者ながらアイスダンス銀メダルと惜敗したマディソン・チョック、エバン・ベーツ組や「世紀の失速」で男子8位に沈んだイリア・マリニンと同様、団体のSPとフリーに両方出場していた。疲労の蓄積も心配、懸念されていたが、影響はあったのか。
これには「全く。身体的な問題ではない」と即座に否定。では、フリーで苦境を乗り越えるためには何が必要か。どんなアドバイスをするつもりか。そう尋ねられると、例をまじえながら答えた。
「野球の試合のようなものなんだ。試合は9回の3アウトまで終わらない。これまでは、いつもSPが強みだったけど、今年はロング(フリー)の練習が、これまで以上に良くなっている。本当に、今までにないくらいと感じている。私はロングに非常に自信を持っている」
言葉通り、りくりゅうのSPは高い安定感を誇っていた。まだ進化途上だった前回22年の北京五輪で8位発進の後、この日まで国際スケート連盟(ISU)公認大会のSP成績は、合計で1位15回、2位6回、3位1回。4位以下が1度もなかった。
「何より言いたいのは、彼らは戦士。最後まで戦い抜くと私は確信しているよ。そして、彼らがコントロールできるのは『これから』だ。今、起きたことは、もう過ぎたこと。終わったこと。それは変えられない。今夜は、つらいだろう。でも明日は、今に、瞬間に集中し、フリーで最善を尽くさなければ、全力を尽くさなければいけない」
現実としては、首位とは約7点差もある。どう、ひっくり返すつもりなのか。マルコット氏の見解は続いた。
「自分自身がコントロールできることに集中しなければいけない。7ポイントの差は、我々のコントロール外だから。でも8年前だって、アリョーナとブルーノも出遅れたけど、追い上げて勝利を収めている。だから十分に可能なことなんだ」
実際、前々回の18年平昌大会では大逆転劇があった。SP4位発進だったアリョーナ・サブチェンコ、ブルーノ・マソ組(ドイツ)が5・80点のビハインドをフリーで巻き返した。SPトップだった「スイハン」こと隋文静、韓聡組(中国)を合計で0・43点、紙一重で上回って金メダルをつかんだ例がある。
このデータを即答できたように、マルコット氏の中に諦めの気持ちはない。三浦、木原も当然だ。
先ほど「非常に自信を持っている」と強調したフリーは、このミラノでの団体(8日)で今季世界最高かつ世界歴代3位の155・55点をたたき出している。今回の首位ハゼ、ボロディン組のベストを5・98点、上回っており、つけられた差6・90点差も、ノーミスで重圧をかければ十分まくれる射程圏内だ。
「ここは五輪。少し(想定と)変わった状況になったかもしれないけれど、彼らはファイターで、しっかりと訓練され、精神的にも肉体的にも非常に強い2人だ。彼らはきっと、自分たちを誇りに思い、日本やファンの皆さんを誇らしく思わせたいと願っているはずだ。どうなるか、見てみよう」
この取材と並行し、報道陣に囲まれていた木原も「調子が悪いわけではない。明日は必ず、ここで、いつもの“りくりゅう”として、お話しできるように。必ず戻ってくるので、待っていてください。必ず戻ってきます」と約束した。
12番滑走から4組抜きの逆転で、金メダルへ。運命のフリーは16日午後10時4分(日本時間17日午前6時4分)から行われる。
取材担当記者◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。飯田高-早大。4年時にアメフトの甲子園ボウル出場。04年入社。文化社会部時代の08年ベネチア映画祭でイタリア初出張。ミラノは2度目。東北総局、整理部、スポーツ部。23年からデスク。25年からDCI推進室と兼務。高校野球の甲子園取材は春2回夏3回。サッカーW杯は1回。五輪は夏3回冬2回。五輪パスはE、Es、ET、Ecの4種を保有している。
【フィギュア】“りくりゅう”三浦璃来&木原龍一組はSP5位 逆転のペア日本初メダル懸ける
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