妻夫木聡ブルーリボン賞主演男優賞「吉沢君の芝居が素晴らしかったから、ごめんなさいという感じ」
ブルーリボン賞主演男優賞を受賞した妻夫木聡(撮影・増田悦実)東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第68回(25年度)ブルーリボン賞が27日までに決定し、妻夫木聡(45)が15年ぶり2度目の主演男優賞、広瀬すず(27)が主演女優賞を初受賞した。
2人は、昨年末の日刊スポーツ映画大賞でも受賞し“2冠”となった。また、山田洋次監督(94)が48年ぶりに監督賞を受賞。今年度の日本映画界を席巻する「国宝」(李相日監督)も、作品賞に輝いた。授賞式は2月17日に都内で開催する。
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妻夫木は、日刊スポーツ映画大賞で石原裕次郎賞を受賞した「宝島」で、今度は自身が主演男優賞を獲得し「裕次郎賞の時も、そうだったけど、沖縄に行きたいな」と、舞台となった沖縄の人々と喜びを分かち合いたいと目を輝かせた。9月の公開後、興行成績は納得できるものではなかったが、25年12月28日に石原裕次郎賞を受賞後、各地でアンコール上映が始まるなど「宝島」の旅は終わらない。さらに、自身の受賞で追い風になるのでは? と投げかけると「じわじわ広がっている。ありがたい」と期待を寄せた。
「宝島」は作家・真藤順丈氏の2019年(平31)の直木賞受賞作の実写映画化作品。戦後に米軍統治下に置かれた沖縄で、米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの姿を描いた。戦後80年に日本返還前の沖縄を劇映画化すること自体、ハードルは高かったが、沖縄の人たちが戦後、米国と日本のはざまで感じたものを、現代の観客が体感できる作品を目指した。「戦後80年。だんだんと皆、教科書でサラッと見ただけの状態になるけど、つい80年前。おじいちゃん、おばあちゃんが生きていたくらいの時代の話で、今も実際に戦争が起きてしまっている。日本は今、平和だけれども、いつ何が起きるか分からない。起きないようにするには1人、1人の思いの思いで変わっていく。知り、伝えていく義務がある。思いを背負った上で、やらせてもらった」と作品の意義を含め、熱っぽく語った。
ブルーリボン賞には、格別の思いを抱く。10年度に「悪人」で主演男優賞を初受賞した際、当時のマネジャーから「記者の方々が、しっかり選んでくださった本当に名誉な賞」と説明され、授賞式の舞台を降りた舞台裏で肩を寄せ合って喜んだ。そのことに話を向けられると「思い出すと泣いちゃうな」と言い、両目から涙があふれた。「ずっと二人三脚でやってきたマネジャーと初めて一緒にもらった賞だから…」と唇を震わせた。
今回は「悪人」と16年「怒り」でタッグを組んだ李相日監督(52)も「国宝」で作品賞を受賞した。製作時期が重なり、互いに脚本制作が難航していることなど情報交換しており「戦友だと思っている」と喜んだ。自身は同作主演の吉沢亮(31)と競り勝っての受賞に「吉沢君の芝居が、本当に良かった、素晴らしかったから、ごめんなさいという感じ」と言いつつ「あれ(『国宝』)を追い求める自分が発生してくると思うから、これから多分、苦しくなると思う」と李組の“後輩”をおもんぱかった。
「宝島」のタイトルにちなみ、自身にとって1番の宝は? と聞かれると「いやぁ…家族でしょう」と即答。「僕は子供ができて、生き方が変わった。そんなことを言ったら、妻に申し訳ないんだけど、いつ死んでもいい、と、どこか思っていた。この作品が遺作になってもいいという思いで毎回、毎回、取り組んでいた」と熱く語った。その上で「子供ができて、死ねないなと思うようになりましたね。育てていかなきゃいけないしね…この子が大人になった時、どう思うかは自分にも関わってくるし。この子と生きていきたいな、笑顔でいるために、どういるべきか、考えるようになりましたね」と続けた。
改めて2度目の受賞の思いを聞くと、まず「石原裕次郎賞をもらった時もそうですけど、個人でもらった気が全然しなくて。みんなでもらった賞」と「宝島」でつかみ取った賞は、みんなのものだと声を大にした。その上で「自分の喜びより感謝の気持ちが強くなる」と続けた。「悪人」で初上昇した時、二人三脚で歩んだマネジャーの顔が脳裏に再び、浮かんだか「感謝」の言葉が自然と出た。でも、その目に、もう涙はなく、笑顔の光が輝いていた。ブルーリボン賞しか抱けない感情を、妻夫木はかみしめている。【村上幸将】
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